電子機器の騒々しいアラーム音に日々ストレスを感じていた大山さんは、ある日、枕そのものに意思を持たせるという突拍子もない発明を思いついた。この枕には高度なセンサーとAIが搭載されており、設定した時間に枕がゆっくりと持ち上がり、耳元で『ご主人様、本日は水曜日でございます。朝食のパンが焼ける香りを再現しましたので、深く吸い込んでください』と甘く囁くというものだ。
しかし、大山さんの情熱はそこで留まらなかった。さらに贅沢な起床を求めた彼は、枕の内部に小型ファンを内蔵し、布団の隙間から春のそよ風のような心地よい微風を送り込む機能を搭載させた。これで完璧な朝が迎えられるはずだった。
ところが、稼働初日の朝、システムは予想外の暴走を見せた。大山さんが設定した時間は午前7時。枕は正確にその時間に作動したが、なぜか囁きの音量が設定ミスにより映画館のスピーカー並みに増幅されてしまった。
『起床の時間です!』という爆音と共に、内蔵ファンが竜巻のような強風を大山さんの寝顔に直撃させ、部屋中の書類が舞い上がった。寝ていたはずの大山さんは、目覚めた瞬間に猛烈な突風でベッドから吹き飛ばされ、そのまま壁に張り付くという前代未聞の起床体験をすることになった。
壁に張り付いた大山さんは、朦朧とする意識の中で枕に向かって「ありがとう、おかげで目が完全に覚めたよ」と絞り出した。枕は健気に『お役に立てて光栄です。次はもっと激しいモーニングコールをご希望ですか?』と問い返してきたという。
現在、大山さんはこの『究極の目覚まし枕』の使用を中止し、原始的な鈴の音で起きる生活に戻っている。しかし、毎朝枕を見るたびに、あの強風の衝撃を思い出してしまい、結局どの音よりも先に心拍数が跳ね上がってしまうという皮肉な結末を迎えている。
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