羽田野氏が開発したのは、時刻になると業務用扇風機のモーターを改良したファンが全力回転し、時速120キロの突風を枕元に吹き付けるという、もはや凶器に近いシステムである。本人は「これならどんな深層心理に沈んでいる人間でも、物理法則に逆らえずに覚醒する」と、その効果に絶対の自信を持っていた。
実験初日の早朝、羽田野氏の寝室にセットされた装置が作動した。設定時刻の午前6時、室内にはジェット旅客機が離陸するような轟音が響き渡り、続いて発生した人工台風が寝具を一瞬にして吹き飛ばした。この威力は凄まじく、羽田野氏がかつて自作した寝室の強化ガラス製窓が一撃で粉砕され、近所の住人が「竜巻が発生した」と勘違いして緊急避難する騒ぎとなった。
現場に駆けつけた消防隊員によると、窓の破片がすべて庭の植木に突き刺さっており、羽田野氏は猛烈な風圧で壁に張り付いた状態で発見されたという。しかし、驚くべきことに羽田野氏本人は爆風の中でも目を覚まさず、破片が頬をかすめるまで「心地よい海風」だと思って眠り続けていたとのことだ。
「設計ミスではない。風速が足りなかっただけだ」と語る羽田野氏は、現在さらなる改良に着手している。次なる構想は、爆風とともに霧状の冷水を噴射し、なおかつ緊急時に頭上の天井から巨大なクッションが降ってくる『強制排除式アラーム』らしい。
近隣住民からは「せめて静かに起きてくれ」「そもそも夜更かしをやめればいいのでは」という真っ当な意見が寄せられているが、羽田野氏の闘志は衰えていない。彼は現在、近所のホームセンターで「対衝撃・防風用」という名目で、家の壁をすべて鉄板で補強する計画を進めている。
結局のところ、羽田野氏がこの目覚まし時計で起床に成功したのは、装置が作動する直前に近隣住民が怖がって鳴らしたパトカーのサイレンのおかげだったという、皮肉な結末を迎えている。
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