「トーストにジャムを塗る、その3秒すら削り出したい」。そんな崇高な理念のもと、羽田野氏は半年間の歳月と全貯金を投じて、このマシンを完成させました。スイッチ一つで食パンがセットされ、毎秒10回転の高速アームがジャムを芸術的に塗り広げる、はずでした。

しかし、試運転の当日、事態は急変します。マシンの出力設定を誤ったのか、アームはジャムではなくパンそのものを時速120キロで射出する投擲(とうてき)兵器へと変貌を遂げました。キッチンには断続的にジャムまみれのパンが壁や天井に突き刺さるという、前代未聞の事態が発生したのです。

「初めはジャムの飛沫が美しい弧を描いて壁に模様を作っていたんです。でも次第にパンが弾丸のように家具を粉砕し始めて……」と羽田野氏は呆然と語ります。近所の人々が銃声と勘違いして通報し、一時騒然となりましたが、警察官が現場に駆けつけた時には、キッチン全体がストロベリージャムの甘い香りに包まれた廃墟と化していました。

羽田野氏自身も、顔面に時速100キロの食パンを直撃されるという悲劇に見舞われましたが、「パンは柔らかかったので命に別状はありませんでした」と、どこか満足げにコメントしています。むしろ、パンの衝撃力という新たな可能性に目覚めてしまったようです。

現在、マシンは強制停止されていますが、壁一面に広がるジャムの飛沫は現代アートとして評価されるのではないかと、一部の近隣住民からは密かに期待の声も上がっています。羽田野氏は既に、次は「全自動でコーヒーを淹れてくれるが、熱湯を周囲に撒き散らすロボット」の開発に着手しようとしているとのことです。

結局、羽田野氏は今朝も手作業でトーストを焼いて食べたといいます。「やっぱり、塗る時の手触りって大事ですね」と、まるで何事もなかったかのように微笑む彼の姿には、革命家の貫禄すら漂っていました。