羽田野さんが開発した『トルネード・スズリ』は、カップ麺の容器を特殊な台座にセットし、スイッチを入れると時速80キロという驚異的な回転数で容器を遠心分離機のように振り回す装置だ。物理法則を無視したかのような勢いで回転するカップの中では、スープが竜巻のように渦を巻き、空気との接触面積を極限まで高めることで、熱々のスープを一瞬にして適温へと導く。
「これまでのフーフーは、所詮は人間が肺活量で抗う原始的な行為に過ぎません」と語る羽田野さんは、開発の動機をそう語る。彼によれば、これまで人類は熱すぎる麺と対峙する際、口元を火傷するという多大なる犠牲を払ってきた。しかし、この装置を使えば、どんなに熱いスープでも空気中に飛散することなく、数秒後には氷点下ギリギリの「啜るのに最適な温度」で器に収まるという。
実際に試作品の動作を実演してもらうと、その光景はまさにカオスだった。回転を開始した瞬間、カップの縁からスープが重力に逆らってスリリングな軌道を描き、わずか3秒で停止した時には、スープはすでに常温を超えて冷え切っていた。しかし、肝心の麺は遠心力のせいで容器の壁面にビッチリとへばりつき、まるで現代アートのような幾何学模様を描き出していた。
羽田野さん自身も、完成した装置を前に「想定以上に麺が壁に張り付く」という嬉しい誤算に困惑を隠せない様子だ。麺を箸で削ぎ落とす必要があるという新たな課題も浮上したが、彼は「麺を削ぎ落とすという儀式こそが、食べる前の心の準備運動になる」と全く動じていない。
専門家からは「そもそもカップ麺は熱いのが魅力ではないか」「そもそも冷ますなら氷を入れればいい」といった現実的すぎる指摘も相次いでいるが、羽田野さんは一貫して装置の進化に情熱を燃やしている。次は、麺を自動で壁面から剥がす『スクレーパー・アーム』の実装を予定しており、最終的には「麺を冷やすためだけに一生を捧げるつもりだ」と力強く宣言した。
なお、この装置の初使用で、羽田野さんは勢い余ってスープをすべて壁に飛び散らせてしまい、その日の昼食は水道水でふやかした乾燥ワカメのみとなった。本人は「この空腹感こそが、次に食べるカップ麺をさらに美味くする最高のスパイスだ」と笑っていたという。
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