会社員の相田慎之介さん(32)は、以前から「耳のパリッとした食感と、ふかふかの生地のコントラストこそが睡眠の質を極限まで高める」と主張し、研究を重ねてきた。彼が開発したのは、頭の形にフィットする特注の角型食パンで、その名も『スイート・ドリーム・トースト』である。

相田さんは、専用の巨大オーブンを自室に設置。毎日、枕のサイズに合わせて完璧な焼き加減でパンを焼き上げている。彼いわく「枕の寿命は焼き上がりからわずか30分。それ以降はただの硬いパンになってしまうため、毎晩アラームをかけて焼き立てをセットしている」とのことだ。

実験開始から一週間、相田さんは睡眠アプリの結果について驚くべき報告をした。入眠までの時間は格段に早まったが、夜中に空腹で目を覚ます回数が劇的に増加したというのだ。さらに、寝返りを打つたびに部屋中に広がる焼きたての香ばしい匂いが、逆に彼を空腹の深淵へと突き落としていた。

事態はさらに深刻化した。昨晩、あまりの香ばしさに耐えかねた相田さんは、寝ぼけたまま自分の枕を「いただきます」と完食してしまったのだ。目を覚ました時、そこにあったのは枕ではなく、枕の形をしたただの空洞と、満足げに膨らんだ自分のお腹だけだった。

「枕としての機能は完璧だったが、寝具を食べてしまうという致命的なバグがあった」と相田さんは遠い目で語る。現在は、食べられないよう表面にニスを塗るか、それともいっそ毎日新しい枕を食べる生活を新しいライフスタイルとして定着させるかで深く悩んでいるという。

専門家の意見として、パン職人の一人は「せめてバターを塗る前に寝てほしい」とコメントしており、パン枕の量産化には依然として高い壁が立ちはだかっている。今夜も相田さんの部屋からは、寝言で「ジャムをください」とつぶやく声が聞こえてくることだろう。