「醤油はただの調味料ではない、芸術だ」そう語る波多野氏は、過去30年間にわたり、あらゆる角度と加速度で醤油を皿に注ぐ研究を続けてきた。これまでには、完璧な放物線を描いて刺身の端にピンポイントで着弾させる『銀河軌道注ぎ』や、ボトルのキャップを開けた瞬間に醤油が自らの意志で皿に飛び込む『テレパシー注ぎ』などを成功させている。

波多野氏の最終目標は、醤油の粒子を音速にまで加速させることであった。この計画のために彼は、特注の超高圧醤油噴射マシンを開発し、自宅のダイニングテーブルを実験室へと改造。家族が食事を待つ中で、彼はゴーグルを装着し、静かに深呼吸をしてその時を待った。

実験当日、波多野氏がスイッチを入れると、醤油ボトルからは凄まじい衝撃波が発生。醤油は霧状になることさえ許されず、空間を切り裂くような轟音とともに皿へと突き刺さった。その瞬間、ダイニングの空気が歪み、光の屈折とともにテーブルの中央に直径数十センチのポータルが出現したのである。

居合わせた家族の証言によれば、ポータルの向こう側には、醤油が満々と湛えられた未知の惑星らしき風景が広がっていたという。「お父さんが『最高のたまり醤油だ』と叫びながら、ポータルの中に箸を突っ込もうとした瞬間、宇宙の彼方から『しょっぱい!』という謎の通信が聞こえてきました」と娘は語る。

波多野氏はその直後に意識を失ったが、奇跡的にポータルは自然閉鎖し、ダイニングは元通りになった。しかし、なぜかその日以来、彼の家では醤油の瓶を開けるだけで、どこからともなく美味しそうな匂いが漂ってくるという怪奇現象が起きている。

現在、波多野氏は「醤油の先には宇宙がある」と確信し、次はソースで銀河系を再現しようと計画中だ。専門家は「彼を止めるのは不可能だが、せめて食卓でやるのはやめてほしい」とコメントしている。