会社員の羽田翼さん(32)は、その卓越した集中力で5年間、一度も机を掃除することなく消しゴムのカスを蓄積させ続けた。その総量は推定120キログラム。羽田さんは「消しゴムのカスこそ、日々の苦悩の結晶であり、形を変えた衆生の叫びである」と、独特の宗教観を語る。

制作過程において最も困難だったのは、その素材の脆さだ。少しのくしゃみで『右手の慈悲』が吹き飛び、エアコンの風で『慈愛の眼差し』が変形するなど、常に崩壊との隣り合わせだった。羽田さんは、カス同士を固めるために「デンプンの粘り」と「執念」を駆使したという。

完成した大仏は、遠目に見れば荘厳な釈迦如来像に見えるが、近くで見ると無数の鉛筆の芯の破片が混ざり込んでおり、どこか鉛筆削りの匂いが漂うシュールな仕上がりとなっている。訪れた近所の住人からは「拝んでいると、急に数学のテストを受けた時の焦燥感が蘇ってくる」との声も上がった。

羽田さんの今後の展望は、この大仏を携えての全国行脚だという。「消しカスは、誰しもが持つ心の汚れを吸い取ってくれる。この大仏を見て、消しゴムを使い切る達成感と無常観を感じてほしい」と語る彼だが、今のところ運搬中に大仏の『左足』が完全に崩壊しており、出発の目処は立っていない。

現在、羽田さんの部屋は強烈なゴムの香りで満たされており、消防署からは「火の気には十分注意するように」との異例の通達が出ている。本人は全く意に介さず、現在は消しゴムのカスを圧縮した『消しカス・ミニ仏像』を大量生産し、メルカリで販売する構想を練っているという。

結局、この大仏の建立によって羽田さんが何を得たのかは不明だが、彼の机の上だけは5年ぶりに真っさらな状態になった。その机を見て羽田さんは「またここから歴史が始まる」と呟き、早速新しい鉛筆を削り始めている。