「地上の気圧や気温では、納豆菌が本気を出していない」と語るのは、自称・納豆開拓家の田所誠二郎さん(44歳)。田所さんは、納豆のさらなる進化の可能性を信じ、宇宙の入り口とも言える成層圏であれば、宇宙線や極低温の影響を受け、これまでにない未知の旨味を持つ『超常納豆』が爆誕するはずだと確信していました。
実験当日、田所さんは特注の超高気密性プラスチック容器に、厳選した大豆と高級な納豆菌を詰め込み、巨大な気球に括り付けました。カウントダウンと共に空へと舞い上がる納豆を見上げ、田所さんは涙ながらに「いってらっしゃい、私の最高傑作よ」と叫び、周囲にいた近所の人々を困惑の渦に巻き込みました。
気球は順調に高度を上げ、やがて成層圏へと到達。田所さんは地上の指令センター(兼・自宅のリビング)で、GPSとカメラ越しに納豆の行方を見守りました。マイナス50度を超える極寒の環境下で、納豆の温度データが異常な数値を叩き出した際、田所さんは「ついに納豆が覚醒した!」と叫び、その場にいた飼い猫を驚かせて飛び上がらせました。
数時間の浮遊を経て、納豆を乗せたカプセルは無事に回収地点へと落下。田所さんは回収班(地元の友人数名)と共に現場へ駆けつけ、期待に胸を膨らませながらその開封式を行いました。周囲が固唾を飲んで見守る中、田所さんが震える手で蓋を開けると、そこには凍りついてカチカチになった、ただの冷たい大豆の塊が鎮座していました。
田所さんは動揺しながらも、その凍った大豆を一口かじりました。静寂が流れる中、彼がポツリと呟いたのは「……これ、ただのフリーズドライの枝豆だな」という、あまりにも身も蓋もない現実でした。
結局、この壮大なプロジェクトによって得られた唯一の成果は、宇宙に行った納豆という、非常に高コストかつ無意味な『宇宙記念フリーズドライ大豆』が数百グラム完成したことだけでした。田所さんは現在、この大豆を高級珍味として売り出そうと画策していますが、購入者は今のところゼロとのことです。
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