自称・時短のカリスマ、羽田野健二さん(42)は、今日までインスタントラーメンの待ち時間に耐えられず、数千個の麺を早食いしては胃を壊してきた。そんな彼が開発したのは、物理法則を超越したかのようなタイマー『瞬麺くん』である。その仕組みは極めてシンプルで、タイマーをセットすると同時に、強力な加圧と超音波振動がカップ内に伝わり、麺を強引にふやかすというものだ。

「3分なんて長すぎますよ。その間に何ができる? 瞑想? 読書? 私はその時間を人生の空白だと考えているんです」と羽田野さんは熱弁する。発表会では、実際に湯を注いでボタンを押した直後にアラームが鳴り、0.5秒で完成した麺を実食してみせた。記者の目の前で披露されたのは、驚異的な速度で完成した……はずの、芯が残りまくった「バリ硬」を通り越した「生」に近い何かだった。

会場は静まり返ったが、羽田野さんは満足げに頷いた。「これが時短の頂点です。咀嚼回数が増える分、満腹中枢が刺激されてダイエット効果も期待できるでしょう」。周囲からは「それ、ただの未調理じゃないか」という冷ややかな視線が飛んだが、彼は全く意に介さない様子で、バリバリと乾麺のような音を立てて麺を噛み砕いていた。

開発コストは300万円を超え、さらに使用するたびにカップが凄まじい衝撃で震えるため、周囲には『バンッ!』という銃声のような音が響き渡る。そのせいで近所からは毎日のように通報が入り、現在は警察署で「ラーメンの調理をしていただけ」という釈明を繰り返す日々だという。

それでも羽田野さんの情熱は冷めない。「次は1秒で茹で上がるパスタの開発に着手します」と宣言した彼は、警察署の取調室で、固い煎餅を噛むような音を立ててカップ麺を啜り続けている。彼にとって、3分待つ忍耐力こそが、この世で最も習得困難な技術なのかもしれない。