田村氏が開発した『ネクタイト君』は、襟元に設置されたアームが、数秒で完璧なウィンザーノットを作り上げる画期的な装置である。発表会当日、田村氏は自信満々に壇上に立ち、「これで人類は、結び目を確認するストレスから永遠に解き放たれる」と宣言した。

しかし、デモンストレーションを開始した瞬間、装置は誤作動を起こした。ネクタイト君は持ち主の首をグイグイと締め上げたかと思うと、異常なスピードでネクタイを左右に振り回し、なんと背中側で巨大な「ちょうちょ結び」を完成させてしまった。

「痛い!苦しい!後ろ!後ろにあるぞ!」と叫ぶ田村氏をよそに、装置は満足げに機械音で『完成しました。本日の首元はキュートです』とアナウンス。田村氏の首は、背中側で結ばれたネクタイのせいで極端に前屈みになり、まるで修行中の僧侶のような姿勢を強制された。

さらに驚くべきことに、この装置には「解体禁止モード」が搭載されており、装着者の意志に反して勝手にほどくことができない。結局、救急隊が駆けつけ、電動カッターでネクタイを切り刻むまで、田村氏は約3時間にわたり、背中に巨大なリボンを背負った直立不動の状態で耐えなければならなかった。

田村氏は病院のベッドから、「次は、結ぶのではなく、襟元にネクタイ柄のシールを貼る装置を開発する」と力なく語った。すでに首にはくっきりと赤い結び目の痕が残っており、その表情には、発明家としての敗北と、ネクタイに対する深い憎悪が入り混じっている。

今回の事件を受け、消費者安全委員会は『ネクタイは手で結ぶのが一番安全です』との異例の注意喚起を出した。なお、会場に残された『ネクタイト君』は、現在も無人の壇上で、誰もいない空間に向かってせっせと「ちょうちょ結び」を作り続けているという。