轟木氏が開発した『ブレッド・キャノン・モーニング』は、コンセントを差し込んでからわずか3秒で、焼きたての食パンを時速80キロで食卓の定位置まで射出するという夢のマシンである。彼は「冷めたパンを食べる時間はない。パンは飛んでくるべきだ」という信念のもと、長年ガレージで試行錯誤を繰り返してきた。

初の実射試験が行われたのは先週の火曜日だった。轟木氏が装置に食パンをセットしスイッチを押すと、轟音とともに発射されたパンは、空気抵抗を無視して部屋を横切り、見事に狙った皿の上に「着弾」した……はずだった。しかし、威力が強すぎたあまり、食パンは皿を貫通し、向かい側の壁に張り付いて動かなくなったのである。

「パンが壁にめり込む光景は、もはや芸術的ですらあった」と轟木氏は当時を振り返る。しかし、彼はあきらめなかった。今度はジャムの塗布機能を強化し、さらなる高みを目指した。その結果、改良型『ブレッド・キャノンMk-II』は、発射と同時にバターとジャムを空中散布しながら標的を狙うという、極めて高度なギミックを搭載するに至った。

悲劇は昨日の朝食で起きた。轟木氏が愛猫の『タマ』を呼んで席につかせた直後、誤って出力を最大に設定したままトリガーを引いてしまったのだ。勢いよく放たれたジャムパンは、朝の光を浴びながら弾丸のように直進し、なんと驚いたタマが空中で見事なヘディングを披露。パンはそのまま二階の窓から外へと飛び出し、通りすがりの郵便配達員の帽子に直撃するという前代未聞の事態となった。

警察が出動する騒ぎにはならなかったものの、近所からは「朝から空飛ぶ朝食が降ってくる」と噂され、轟木氏は近隣住民から『パン爆撃おじさん』というありがたくない異名を頂戴したという。

轟木氏は現在、反省を込めて装置を封印しているが、本人は依然として前向きだ。「次はトーストではなく、味噌汁をレーザービームのように射出するシステムを考えている。朝の食卓に、さらなる刺激が必要なんだ」と語る彼の目は、すでに未来の朝食を見つめているようだ。