自称・時短イノベーターの羽田野健一さん(34)が発表したのは、装着した瞬間に視覚情報が超高速で脳に送られ、体感時間を大幅に短縮するという『脳内3分加速ゴーグル』である。羽田野さんは「お湯を入れてからフタを閉め、フォークを準備するまでのわずかな間に、宇宙の真理を悟るほどの焦燥感を感じていた」と開発の動機を語った。
装置の仕組みは極めてシンプルだ。ゴーグルに内蔵された超小型プロジェクターが、目の前の景色を猛烈なスピードでコマ送りし、脳を錯覚させることで「3分を0.5秒」として認識させる。これにより、お湯を注いで「よし、出来た!」と瞬きをしただけで麺が茹で上がるという奇跡の体験が可能になったという。
発表会で行われた実演では、羽田野さんがカップ麺に湯を注ぎ、ゴーグルを装着して瞬きをした直後に「完食!」と叫んだ。しかし、周囲の記者たちには、羽田野さんがカップ麺の前でただ10分間白目を剥いて硬直しているようにしか見えず、会場は静まり返った。
結果として、麺は完全にのびきり、スープは冷めきっていたものの、羽田野さんは「私の脳内では、3分間は瞬き一つの出来事だった。これぞ人類の勝利だ」と恍惚の表情を浮かべた。なお、このゴーグルの副作用として、装着者は日常生活のあらゆる動作が「超高速」に感じられすぎてしまい、歩くだけでジェットコースター以上のGを感じるようになり、現在は特製台車に縛り付けられて生活しているという。
最後に羽田野さんは、「次は、睡眠時間を3秒に短縮して、一生を『寝起き』だけで過ごす枕を開発する」と宣言した。その野望のあまりの壮大さに、取材陣は一斉にその場から退散し、残されたのは冷めきったカップ麺と、台車の上で猛烈な勢いで痙攣する羽田野さんだけであった。
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