都内在住の轟木満太郎さん(72)は、幼少期に「世界一ふわふわした納豆を食べたい」という純粋かつ無謀な夢を抱いて以来、50年間にわたり納豆を混ぜ続けてきました。当初はただの趣味でしたが、次第に混ぜる速度にこだわり始め、ついに自作の超高速回転装置を開発するに至りました。
轟木さんが開発した「ナットウ・トルネード・マシーン」は、特殊な磁気浮上技術を用いて、容器に入った納豆を時速300キロで回転させるという代物です。稼働中は地鳴りのような重低音が響き、近隣住民からは「また轟木さんが宇宙と交信している」と噂されていました。
「ただ混ぜるだけではいけない。豆の分子に『お前はこれから極上の美味しさになるのだ』と言い聞かせるために、物理的な高負荷が必要なのです」と語る轟木さんの眼差しは、ノーベル賞物理学賞受賞者よりも鋭く、そして狂気に満ちています。
先日行われた公開実演では、300キロの回転が始まった瞬間、納豆容器が摩擦熱で真っ赤に発光。見学していた近所の人々が恐怖で後ずさりする中、容器の中の納豆は完全に溶け去り、黄金色に輝く未知のタンパク質スープへと変貌を遂げました。
轟木さんはその液体をスプーンですくい、厳かに試飲しました。その瞬間の表情は、悟りを開いた僧侶のような穏やかさと、長年の苦労が報われた達成感に満ち溢れていました。彼が放った第一声は「……あ、これ、味は普通の納豆だ」というものでした。
結局、時速300キロもの負荷をかけても味は微塵も変わらないという科学的事実を突きつけられましたが、轟木さんは全く意に介していません。「重要なのは、私がこの納豆を『誰よりも速く』混ぜたという事実だ。これ以上の幸福があるだろうか」と、今日もまた、轟木さんは静かに、しかし最高速で納豆を回し続けています。
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