近所に住む針山千尋さん(34)は、幼少期から納豆を愛してやまない納豆マニアとして知られています。彼は長年「納豆を食べるだけでなく、身にまとうことで納豆との一体感を得られるのではないか」という研究を重ねてきました。
針山さんは半年間かけて、粘り気の強い高級納豆から粘液を抽出し、特殊な乾燥技術を用いて極細の繊維に加工。それを丁寧に編み上げることで、世界初の『納豆繊維100%ニットセーター』を完成させました。
完成したセーターからは、すれ違う通行人が思わず二度見するほどの強烈な発酵臭が漂っていましたが、針山さんは「これは芳香です。周囲を納豆の平和な香りで包み込んでいるのです」と意に介しませんでした。
しかし事件は、彼が公園のベンチで日向ぼっこをしていた午後に起こりました。あまりの暖かさと心地よい香りに包まれて空腹を感じた針山さんは、昼食を持参し忘れたことに気づきました。
極限の空腹状態にあった針山さんの脳内では、目の前のセーターと、目の前にあるはずの熱々の白米が混同され始めました。彼は無意識のうちに、右袖を掴んで「ちょっと味が薄いな」と呟きながら、周囲の冷ややかな視線も気にせず箸を入れました。
駆けつけた通りすがりの警察官によると、針山さんはセーターの袖を箸でぐるぐると巻き取り、「この、程よい粘り気がたまりません」と恍惚の表情で自らの右腕を咀嚼しようとしていたといいます。
幸いにも、駆けつけた知人が「それは服ですよ!」と必死に制止したため、針山さんの服が全滅する事態は免れました。しかし、すでに右袖の半分は無残な状態となっており、現場にはなんとも言い難い納豆の香りが立ち込めていました。
針山さんは「食欲に負けて服を食べるという本能には勝てなかった。次は防腐剤を練り込んだ、食用不可のセーターを作ります」と反省の色を見せつつ、すでに新しい編み図を描いているようです。
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