羽田野氏が開発した装置は、高出力の超高速遠心分離機を改造したものだ。この装置に醤油を塗ったおにぎりをセットし、スイッチを入れると、おにぎりは瞬く間に目視不能な速度で回転を開始。周囲には醤油が霧状になって飛散し、一帯が深夜にもかかわらず居酒屋のような芳醇な香りに包まれた。
実験の動機について、羽田野氏は「焼おにぎりは、火力が中心まで届く前に外側が焦げてしまうというジレンマを抱えている。だが、音速で回転させれば空気との摩擦熱で均一に加熱され、さらには遠心力で米粒同士の結合が強固になるはずだ」と、物理学の教科書が真っ青になるような独自理論を展開した。
実際に実験が行われた際、おにぎりはソニックブームを伴いながら空中で静止したかのように唸り声を上げた。その速度はまさにマッハ1。計測器の数値が限界突破を示す中、突如としてラボ全体が強烈な「焼きおにぎり臭」に支配され、近所の住民が小腹を空かせて駆けつける騒ぎとなった。
実験終了後、装置から回収されたおにぎりは、もはやおにぎりの形を留めておらず、極限まで圧縮された謎の「醤油味のプレート」に変貌していた。羽田野氏は誇らしげにそれを試食しようとしたが、硬度が高すぎて歯が立たず、あえなく実験器具のメンテナンス用レンチで粉砕して食べる羽目になった。
羽田野氏は今回の成果を「おにぎりの新たな地平を開いた」と自画自賛する一方で、実験の代償として装置の軸受けが焼きおにぎり成分で完全に固着し、修理費用が数百万単位になることが判明。次回は「マッハ2の極上だし巻き卵」に挑戦する予定だが、周囲の協力者は既に全員、辞表を提出する準備を整えているという。
結局、完成した究極の焼おにぎりの味について尋ねると、羽田野氏は「正直、回転が速すぎて味が原子レベルで混ざり合い、食べた瞬間に頭の中で醤油の歴史が走馬灯のように駆け巡る不思議な味がした」と、食べたのかどうかも不明な供述を繰り返している。
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