羽田野氏は幼少期から「なぜ麺は逃げ、スープは跳ねるのか」という疑問を抱き続け、10年前から独学で麺響学を提唱。彼の目標は、麺をすすった瞬間に発生する吸引音をソニックブーム(衝撃波)に変え、一気に胃袋まで到達させる「超音速麺吸引法」の確立である。

実験当日、羽田野氏は特注の高性能掃除機を改造した吸引補助装置を口元に装着。防音壁で囲まれた自宅の食卓で、沸騰したての塩ラーメンを前にして気合を入れた。彼は「空気を麺と共に巻き込むことで、摩擦係数をゼロにする」と豪語し、スイッチを強引にオンにした。

しかし、装置が起動した瞬間に起きたのは、超音速の吸引ではなく、凄まじい逆流であった。装置の不手際により、ラーメン鉢の中身がすべて羽田野氏の顔面に向けて噴水のように発射されたのである。熱々のスープを直撃させた羽田野氏は、まるでシャワーを浴びた直後のように全身ずぶ濡れとなった。

現場に駆けつけた消防隊員によると、部屋は一面の塩ラーメンまみれであり、羽田野氏は麺を頭に巻き付けたまま、呆然と壁を見つめていたという。「麺は、私の意志とは逆の方向に進化してしまったようだ」と、羽田野氏は震える声で語った。

なお、近隣住民からは「夜中に掃除機が暴走するような音がして眠れなかった」「壁から謎のスープが染み出してきた」との苦情が相次いでいる。管理会社は羽田野氏に対し、今後自宅内での「麺響実験」を全面的に禁止する命令を下した。

失敗に終わった羽田野氏だが、本人は既に次なる研究に着手している。今度は「麺にプロペラをつけて空中飛行させ、口でキャッチする」という、さらに危険で無意味な計画を練っているという。もはや、すすることすら放棄した彼の麺への執着は、どこへ向かおうとしているのだろうか。