会社員の羽田野健二さん(34)が開発したのは、ボタン一つで首元を完璧にキメる「全自動ネクタイ結び機」です。これまで朝の忙しい時間にネクタイを締める作業に平均3分を費やしていた羽田野さんは、「この時間を削減できれば、人類は月へ行ける」という独自理論に基づき、半年かけて試作機を作り上げました。

しかし、試験運用の最中に惨劇は起こりました。羽田野さんが首にマシンを装着し、起動ボタンを押した瞬間、内蔵された高性能モーターが予想外の最大出力で回転を始めたのです。通常であれば優雅に結び目を作るはずの装置が、羽田野さんの首を中心に超高速でネクタイを振り回し、まるで首元で小型のヘリコプターが離陸しようとしているかのような轟音を響かせました。

「目が回り、自分の首がネクタイに絞め殺されるというより、宇宙へ射出されるような感覚でした」と羽田野さんは当時の心境を語ります。ネクタイはプロペラのように空を切り、隣に置いてあった朝食のトーストを粉々に粉砕。さらには羽田野さんのシャツの襟を巻き込み、ボタンを一つ残らず弾き飛ばすという荒業を見せつけました。

あまりの回転の激しさに、部屋の空気清浄機が火災警報と誤認して鳴り響く中、羽田野さんは必死の思いで電源コードを物理的に引き抜きました。静寂が戻った部屋で彼が鏡を見ると、そこには、ネクタイが幾重にも複雑に絡まり、もはや結び目という概念を超越して巨大な「首元のお団子」と化した自分の姿があったといいます。

この経験を経て羽田野さんは、「効率化を追い求めた結果、逆に朝の支度が以前より30分長くなった」と冷静に分析しています。現在、このデバイスは解体され、本来の目的である「ネクタイを締める」ことには一切使えないまま、近所の子供たちがコマとして遊ぶための遊具へと転生を遂げました。