都内在住の田所満太郎さん(34)は、極度のビビリ性で知られるサラリーマンだ。特に目玉焼きを作る際、白身がパチパチと弾ける音を聞くと「まるで戦場のようだ」と心拍数が急上昇し、これまではレンジでチンするタイプのカップ麺で朝食を済ませていた。

しかし、どうしても「半熟でカリカリの縁」を持つ理想の目玉焼きを食べたいという情熱に目覚めた田所さんは、ホームセンターで素材を買い込み、調理用対爆スーツの製作に着手した。完成したのは、耐熱アルミシートを張り合わせた頭部ユニット、強化プラスチックのフェイスシールド、そしてなぜか肩に装着された冷却ファン付きの排熱ダクトである。

今朝の調理風景を目撃した近隣住民は「最初は不審者が侵入したのかと思った。銀色の巨体がフライパンの前で身構え、卵を割り入れる瞬間に軍隊のような号令をかけていた」と証言する。田所さんは、卵をフライパンに落とすと同時に自らのバイザーを下ろし、全神経を集中させて防御態勢をとるという。

特筆すべきは、その重装備ゆえの不便さだ。スーツの重量は20キロを超え、フライパンを返すたびに「ギギギ」と金属音を響かせながら関節を動かす必要がある。また、視界が非常に悪く、目玉焼きをひっくり返す動作はもはや格闘技の演武に近い迫力があると自負している。

「油ハネという攻撃を完全に無効化できた時の達成感は、何物にも代えがたい」と田所さんは語る。調理後は、そのままの姿でリビングまで移動し、重厚なフェイスシールド越しにフォークを使って朝食を楽しむという。ちなみに、咀嚼のたびに響く機械音で、愛猫からは完全に逃げられているという。

しかし肝心の味については、「緊張のあまり味がほとんどしない。ただ、命を懸けて焼いたという事実だけが、今の私を支えている」と、どこか神妙な面持ちで語ってくれた。明日からは、味噌汁が沸騰する時の泡の音に対抗するため、さらなる防音強化と、専用のゴーグルを開発する予定だという。