発明家の羽田野健二郎氏(45)が開発したのは、パンを投入すると時速120キロの速度でバターを射出・コーティングする『バタースナイパーDX』です。彼は「均一な塗布こそが人類の平和の第一歩」と語り、この革新的な装置を自宅のキッチンで試験稼働させました。

しかし、最初のテストで悲劇は起こりました。起動スイッチを押した瞬間、内部の圧力調整弁が故障し、マシンは本来の目的であるパンへの塗布を放棄。代わりに、冷蔵庫から取り出したばかりの冷たく固いバターの塊を、マシンは容赦なくリビングの壁面全体に向かって連射し始めたのです。

「壁が黄色く染まるスピードは、まるでゴッホの筆致を早回ししたようでした」と羽田野氏は当時の状況を振り返ります。リビングは瞬く間にバターの弾丸で埋め尽くされ、愛猫がバターまみれになってスライディングする事態へと発展しました。マシンの排気口からは、まるで軍事演習のような重厚なバターの香りが立ち込めていたといいます。

近所の住民が「家から異常に良い匂いがするが、同時に何かが激突する音がする」と警察に通報する騒ぎとなり、現場に駆けつけた警官たちもあまりのバター臭に思わずお腹を空かせてしまったという目撃証言もあります。

羽田野氏は即座にマシンの緊急停止ボタンを押しましたが、マシンは止まる直前に最後の一撃として、空中に浮遊していた食パンに向けて完璧な角度でバターの塊をシュート。見事にパンのど真ん中に突き刺さった光景を目の当たりにした彼は、「これぞ、至高のトーストの完成形だ」と涙を流したと伝えられています。

現在、羽田野氏は『バタースナイパーDX』のプロジェクトを完全に凍結し、壁の清掃に追われる毎日を送っています。「パンには塗れなかったが、壁をバターでコーティングする防腐技術として特許を取る予定です」と語る彼の目は、すでに次の無意味な挑戦へと向かっているようです。