現場となったのは、地元で毎年恒例となっている「里山餅つきフェスティバル」の会場だ。田中くんは早朝から黙々と杵を振り上げ、周囲を圧倒するペースで餅をつき続けていた。観衆がカウントを続ける中、ついに驚異の19000回を記録した瞬間、会場は歓声に包まれた。

しかし、その直後の出来事は多くの参加者の記憶を曖昧にさせている。記録達成を祝い、田中くんが最後の一打を搗き終えたその時、突如として彼を囲むようにして不思議な閃光が走ったと証言する者が複数現れた。

「気がつくと、そこには蒸したもち米が残されているだけで、田中くんの姿はどこにもなかった」と、運営スタッフのひとりは肩をすくめる。杵だけがその場に整然と置かれており、まるで最初から誰もいなかったかのような静けさが会場を包んだという。

インターネット上ではこの一件に対し、一部のユーザーから「あまりの記録に異次元の扉が開いたのではないか」「実は政府の極秘プロジェクトだったのでは」といった推測が飛び交い、一時トレンド入りする事態となった。

地元の警察は、現時点では事件性はないとして田中くんの足取りを追っている。なお、当日搗かれた19000回分の餅については、「とても柔らかく仕上がっており、記録達成の証として来場者に振る舞われた」とのことだ。

田中くんを知る友人たちは、「彼は昔から何かを極めることに集中するタイプだった。もしかすると、餅つきの向こう側にある何かを見に行ったのかもしれない」と語り、彼の無事を祈りつつも、その結末をどこか神秘的な物語として受け止めている様子だ。