ベーカリー『黄金の縁取り』店主である波多野健二郎氏(45)は、幼少期からパンの白い部分を「虚無の空間」と呼び、忌み嫌ってきた。そんな彼が10年の歳月を費やして完成させたのが、外側のみで構成された円筒状のパンである。
特許出願中の製法によれば、波多野氏は専用の超長細い型枠を使用し、オーブンの熱を縁だけに集中させることで、中心部に物理的な生地が存在する隙を与えないという。焼き上がったパンは、まるでタイヤのような見た目をしており、その香ばしさは通常の食パンの約50倍に達するという。
「白い部分という甘えを捨てた時、真の香ばしさが手に入った」と語る波多野氏。試食会に参加した地元の食通たちからは「どこを噛んでもカリカリして口の中が痛い」「無限に耳が続くので永遠に終わりが来ない恐怖がある」といった、賛否両論ならぬ「困惑」のコメントが寄せられた。
この『エンドレス・クリスプ』と名付けられたパンは、製造コストが通常のパンの8倍かかるうえ、食べるたびに耳のカスが服の広範囲に散らばるという欠点がある。しかし、熱狂的なファンからは「服がパンのカスで埋め尽くされることこそが、パン愛好家の勲章だ」と逆に賞賛されている。
現在、同店には「耳しかないパン」を求める行列ができており、近隣住民からは「パン屋の前を歩くと、まるで砂利道を歩いているようなザクザクという音が聞こえてきて落ち着かない」という苦情も出ている。
波多野氏は次なる目標として「パンの皮だけで作ったタキシード」の開発を掲げており、この飽くなき挑戦に終わりは見えない。なお、廃棄されたパンの白い部分は、地元の農家に肥料として引き取られているが、土壌の栄養分が過剰になりすぎて野菜が異常にふっくらと育ってしまうという二次被害も報告されている。
コメント
まだコメントはありません。