パン愛好家の羽田野健二郎さん(42)は、幼少期より「白い部分はおまけ、耳こそがパンの本体である」と主張し続けてきました。この度、彼はその信念を極めるべく、地元のパン屋から廃棄される耳を3年がかりで買い取り、100キロ分を蓄積。現在、自宅の庭に巨大なパンの耳の要塞を建設中です。

「壁はすべて耳です。耳にはパンの旨味が凝縮されており、強度も実は高いんですよ。特に少し乾燥した耳はレンガ以上の耐久性を誇ります」と、羽田野さんはヘルメットをかぶりながら熱弁します。建設現場には、彼が独自に開発した『小麦粉糊』を接着剤として塗り込む、独特の工法が採用されています。

建設中の要塞は高さ2メートルに達しており、アーチ状の入り口には「耳の守り神」と称される巨大な山型食パンのオブジェが鎮座しています。近隣住民からは「なんだか香ばしい匂いが漂ってくる」「雨が降った時に大丈夫なのか」と、心配と困惑の声が上がっていますが、羽田野さんはいたって冷静です。

しかし、この要塞には深刻な問題も発生しています。建設が進むにつれて、周辺の野鳥や近所のリスたちが、この「食べられる要塞」を狙って集結し始めたのです。昨夜は、カラスの一団が要塞の「左翼」にあたる部分を完全に食い荒らすという、建築史上類を見ない襲撃事件が発生しました。

「正直、計算外でした。カラスの食欲を甘く見ていた」と語る羽田野さんですが、彼は諦めていません。現在、要塞の防衛策として、耳の表面に食用オリーブオイルを塗り、滑りやすくする「防鳥コーティング」を施す検討を始めています。もはや建築というよりは、巨大な料理との戦いとなっています。

完成の暁には、要塞の中でパンの耳を片手に、最高のトースターで焼いた耳を食す優雅なティータイムを過ごすのが夢だと語ります。ただし、彼が要塞を完成させるスピードよりも、カラスたちが要塞を食べるスピードの方が早いため、完成の日はまだ遠そうです。