競技ルールは極めてシンプルだ。アラームが鳴ってから布団から出るまでの時間をいかに『贅沢かつ深い眠り』に変えられるか、その入眠の深さを脳波センサーで測定する。羽田野選手が叩き出した数値は、一般的な冬眠中のクマを凌駕するレベルであり、会場は静寂に包まれた。

決勝戦での羽田野選手は、掛け布団の角度をミリ単位で調整し、枕を耳の裏にジャストフィットさせる『黄金の三角形』を作り上げた。周囲が歓声やカメラのフラッシュで騒然とする中、彼は開始からわずか3秒でイビキをかき始め、その速さと深さに審査員たちも思わずあくびを漏らしたという。

大会関係者によると、羽田野選手の勝因は『夢の中で完全に仕事を忘れるプロフェッショナルな忘却スキル』にあるという。彼は予選から決勝まで、一貫して『出勤の絶望感』を脳内から完全に排除することに成功しており、その安らかな寝顔はまるで悟りを開いた僧侶のようだった。

表彰式では、優勝トロフィーが授与されるはずだったが、羽田野選手が深い眠りから一向に覚醒しなかったため、大会運営側は彼を布団ごと運搬用トロリーに乗せて会場から退場させるという異例の対応をとった。

優勝インタビューは本人の希望により『来週の火曜日の午後』に持ち越される予定だが、関係者からは『たぶんその時もまだ起きないのでは』という冷静な懸念の声も上がっている。

なお、帰宅後の羽田野選手は、自宅のベッドで二度寝の祝勝会(という名の昼寝)を継続しており、現在は三度寝目に突入しているとのこと。本人は夢の中で優勝カップにコーヒーを注ぐという、極めて効率的な勝利の美酒を味わっているようだ。