ことの発端は、田所氏が抱いた「カリッと焼けた耳の端っこを、腹いっぱい食べたい」という極めて純粋で個人的な欲望でした。田所氏は古民家を巨大な電熱オーブンに改造し、数トンもの小麦粉とバターを練り込み、特注の巨大な金型に流し込みました。焼成中、町中にはパン屋さんがひっくり返るほどの濃厚な香ばしい匂いが漂い、住民たちは朝から空腹で気を失いそうになったといいます。
完成したそのトーストは、まさに圧巻の一言でした。屋根の上に突き出たその巨大なパンは、朝日を浴びて黄金色に輝き、町の人々からは「パンのパルテノン神殿」と畏怖の念を込めて呼ばれるようになりました。田所氏は専用の巨大バターナイフを自作し、クレーン車で巨大なバターの塊を持ち上げて、今まさにその一枚に塗ろうと試みました。
しかし、事態は予期せぬ方向へ進みました。トーストのあまりの重みにより、古民家の基礎が悲鳴を上げ、建物全体が地盤沈下を起こし始めたのです。さらに、焼きたてのアツアツなパンからは膨大な湯気が発生し、町全体が天然の蒸しパン工場のようになってしまい、周囲の住宅街は数時間にわたり視界不良に見舞われました。
田所氏は「これこそが真の朝食のあり方だ!」と叫びながら、巨大なバターを塗る作業を強行しようとしましたが、消防隊の懸命な説得(という名のバター没収)により、計画は中止を余儀なくされました。結局、その巨大トーストは、近隣の山羊たちの今後数十年分の食事として無償提供されることとなりました。
この騒動を受け、町役場は「住宅地における大規模パン焼成の禁止に関する条例」を緊急制定。田所氏は現在、山羊たちがパンの山に埋もれて幸せそうに眠る姿を眺めながら、次は「一口サイズの超高密度あんパン」の開発に情熱を燃やしています。
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