都内在住の無職、田所豊蔵氏は、かねてより「カップ麺の待ち時間である3分間は、人生において最も無駄な空白である」と主張し続けてきた。この課題を解決するため、彼は昨日、家庭用ドライヤー3台と、最大風量設定の工業用扇風機1台をキッチンに持ち込み、実験を開始した。

実験の目的は、麺を熱湯に浸した瞬間に、超高速の温風を吹き付けることで、麺の水分吸収プロセスを物理的に「強制加速」させるというものだ。田所氏は「通常3分かかる工程を、風力で分子レベルに揺さぶりをかけることで、わずか12秒に短縮する予定だった」と語る。

開始の合図と共に全機器のスイッチが入ると、キッチンは凄まじい轟音に包まれた。しかし、調理しようとしたカップ麺の容器は、強風に耐えきれず回転し始め、瞬く間にキッチンの床へとダイブ。飛び散る熱湯と、なぜか部屋中に舞い散る乾燥ネギの粒子が、田所氏の顔面を直撃した。

混乱の最中、田所氏の妻が帰宅。リビングからキッチンへ続く廊下は、まるで竜巻が通過したあとのように、具材が散乱し、ドライヤーの配線がスパゲッティのように絡まり合っていた。妻は「また新しい変なことを始めたのね」とため息をつき、静かに電源を落とした。

実験失敗の要因について田所氏は「物理現象としての麺の膨張は計算通りだったが、カップの強度が風圧に耐えられなかった」と分析。今後はチタン合金で自作した超頑丈な調理容器の開発に着手すると意気込んでいる。

なお、散乱したカップ麺の残骸を掃除した後、田所氏は静かにお湯を注ぎ、3分間じっと待った。完成した麺を一口すすった彼は、「やはり、ただ待つという時間が一番のスパイスだったかもしれない」と、急に悟りを開いたような顔で呟いたという。