自由人民共和国を名乗るこの団体は、山間部に位置する私有地の一部を「主権領土」と定義し、独自に制定した憲法を掲げている。建国を宣言したのは、これまで静かに生活を営んでいた1人の人物だ。周囲からは一風変わった試みとして温かく見守られている。

特筆すべきは、その統治機構のシンプルさにある。国民が1名であるため、立法、司法、行政のすべてを本人が兼務する形式を採用。意思決定のスピードは世界最速と自負しており、数秒で法改正から予算編成まで完了する驚異的な行政システムが構築されているという。

外交方針については「平和的かつ友好的な孤立主義」を掲げており、近隣住民との対話は円滑に行われているそうだ。国交については「いつでも門戸は開いているが、今のところ事務処理に追われて忙しい」と、建国主は苦笑いしながら語っている。

この「自由人民共和国」の経済基盤は、自給自足を中心とした小規模な農業と、デジタル空間における創作活動の二本柱となっている。通貨は発行されていないものの、本人の手作り工芸品が国内(兼居住スペース)で高く評価されているとの噂だ。

専門家は今回の事象について、「国家という概念を極限までパーソナルなレベルにまで解体した、前衛的なライフスタイルの実験」と分析する。既存の社会システムから一時的に距離を置き、自己の理想を再構築しようとする姿勢には、現代社会における新しい余暇のあり方が垣間見える。

建国から数日が経過した現在、自由人民共和国では初めての『国営記念日』を祝う準備が進められている。華やかな祝賀パレードなどは行われないものの、美味しいコーヒーを淹れてのんびりと過ごすことが、この国にとっての最大の祝祭であるようだ。