轟木さんは、お湯で戻した即席麺を箸で高く掲げた状態で、ヘリコプターを使って急速に標高を上げるという前代未聞の作戦を立てた。空気の薄い高地で急速冷却することで、麺のコシをナノレベルで固定できるという独自の仮説を証明するためである。
実験当日は、地元で愛用している特製マグカップに麺を盛り、特殊な耐風箸を使用して固定した。轟木さんは離陸直前、麺が踊らないように「お前はもう冷える運命にある」と静かに麺へ語りかけ、準備を整えた。
離陸とともに高度が上がると、機内には特製ソースの香りが立ち込めた。轟木さんは麺を空中にさらしたまま、気圧の変化で麺が膨張するのを見守りつつ、その表情には静かな闘志が宿っていた。同乗したパイロットは「後ろから麺がこちらを見ているようで非常に怖かった」と証言している。
高度二千メートルに達したところで、奇跡は起きた。激しい気流によって麺が一本ずつ完璧に直立し、まるで雪山の植物のような美しい形状を維持したのだ。轟木さんはこの瞬間を「麺界のルネサンス」と呼び、興奮のあまり酸素マスクをつけ忘れそうになったという。
しかし、悲劇は三千メートル地点で訪れた。あまりの低温と突風により、麺が完璧に冷凍状態となり、箸が完全に凍りついて離れなくなったのだ。轟木さんはそのまま麺をくわえることもできず、ただ凍った麺のタワーを掲げたまま着陸を待つことになった。
着陸後、轟木さんは凍りついた麺のオブジェを手に「完璧なコシは手に入れたが、食べる権利は失った」と力なく笑った。現在、その凍った麺は彼の家の玄関に芸術品として飾られているが、近所の猫が全く寄り付かないため、防犯対策として非常に優秀だと評判である。
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