前回、決算書(貸借対照表と損益計算書)について紹介しました。
決算書を作るのは簿記の最終目的ですが、そのための最初のステップは、個々の取引を日付順にまとめた帳簿である仕訳帳を作ることです。
1年間の経済活動の中では、様々な取引があります。例えば、現金を払って材料を仕入れたり、その材料を加工して作った商品を販売したり、というものです。
これらの取引全てをひとつの表にまとめたものが仕訳帳と言えます。この記事では、実際の取引例から仕訳帳を記述する方法を紹介します。
(仕訳帳を作らず、個々の取引内容が記録された伝票を用いて、必要書類を作る方法もあります)
仕訳帳の例
例えば、以下の複数の取引が行われたとします。
日付 | 内容 |
1/14 | 50,000円の機材を買い、現金で支払った |
1/21 | 165,000円の製品を販売し、代金を現金で受け取った |
1/23 | 銀行口座から事務所の家賃として80,000円が引き落とされた |
これを仕訳帳に記載すると、以下のようになります。

このように、1年間の全ての取引を表に全てまとめたものが仕訳帳です。
借方や貸方、科目などの言葉がありますが、仕訳帳を作成するにあたって、これらの意味を理解しておく必要があります。
借方と貸方
取引は、何かを得ると同時に何かを失っていると言えます。上記の仕訳帳に書かれた取引について考えてみましょう。
最初の取引では、事業に必要な機材を得ると同時に、その対価となるお金を失っています。次の取引では、165,000円で販売できる価値のある商品を失うことで、その対価となるお金を得ています。
具体的な物のやり取りがない場合でも、例えば権利を得ると同時にお金を失う、ということも考えられます。
仕分けにおいては、この「得たもの」と「失ったもの」の両方の視点で取引を見ます。そして、それぞれを表の左と右に分けて記載することになります。
この表の左側を借方、右側を貸方と呼びます。
後述する勘定科目は、借方(左)と貸方(右)のどちらに書くかが決められています。
勘定科目とは
取引によって動いた金銭や物品、債権などがどういったものなのかを説明するのが勘定科目(科目)です。
勘定科目を見ることで、何に対して現金を支払ったのか、何によって現金を得たのか、なぜ口座から引き落としがあったのか…などを知ることができます。
勘定科目のグループと具体例
勘定科目は大きく5つのグループに分けられます。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 費用
- 収益
上記の仕訳帳で使われている勘定科目をこれらに当てはめると、以下のようになります。
- 資産
- 現金
- 普通預金
- 負債
- 純資産
- 費用
- 消耗品費
- 地代家賃
- 収益
- 売上高
そして、この勘定科目を借方(左)と貸方(右)のどちらに書くかがルールとして定められています。
勘定科目と借方・貸方のルール
勘定科目を借方と貸方のどちらに書くのかは以下のルールに従います。
- 資産が増えたら借方、減ったら貸方
- 負債が増えたら貸方、減ったら借方
- 純資産が増えたら貸方、減ったら借方
- 費用が借方、収益は貸方
先程の仕訳帳で確認してみましょう。

最初の取引では、費用である消耗品費が借方、その対価として払った(減った)資産である現金が貸方に書かれています。
次の取引では、製品を販売して得た(増えた)資産である現金が借方、販売によって発生した収益である売上高が貸方に書かれています。
最後の取引では、費用である地代家賃が借方、その対価として引き落とされた資産である預金が貸方に書かれています。
このように、全ての仕訳はルールに従って記述されます。
仕訳の練習問題
実際に仕訳帳を作るための練習をしてみましょう。上記のルールに従って各勘定科目を借方と貸方に正しく記述して下さい。
練習問題1
2月3日、商品を20,000円で売り、代金は掛けにした。
ヒント: 掛けの勘定科目は資産グループの売掛金
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
2/3 | 売掛金 | 20,000 | 売上高 | 20,000 |
練習問題2
2月5日、掛けにしていた代金20,000円を現金で回収した。
ヒント: 資産グループの売掛金が減少し、同じ資産グループの現金が増加した
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
2/5 | 現金 | 20,000 | 売掛金 | 20,000 |
練習問題3
7月23日、現金100,000円を自分の普通預金口座に振り込んだ。
ヒント: どちらも資産グループ
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
7/23 | 普通預金 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
練習問題4
4月1日、現金3,000,000円を元手に個人事業を開業した。
ヒント: 個人事業主の資本金の勘定科目は純資産グループの元入金
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
4/1 | 現金 | 3,000,000 | 元入金 | 3,000,000 |
練習問題5
5月6日、事務所で使う椅子とテーブルを150,000円で購入し、代金は口座からの引き落としとした。
ヒント: 備え付ける事務用品は資産グループの備品
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
5/6 | 備品 | 150,000 | 普通預金 | 150,000 |
練習問題6
6月12日に携帯電話の通話料1,800円をクレジットカードで支払った。7/27にその代金が実際に預金口座から引き落とされた。
ヒント: 2行になります。通話料は費用グループの通信費。クレジットカードの後払いは負債グループの未払金
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
6/12 | 通信費 | 1,800 | 未払金 | 1,800 |
7/27 | 未払金 | 1,800 | 普通預金 | 1,800 |
実際の仕訳帳では、後で何をやり取りしたのか思い出せるように、取引の詳細を摘要欄に書くことが望ましいでしょう。