市販されているヨーグルトなどの発酵乳には、様々な健康効果をもたらす乳酸菌が含まれているものがあります。
明治乳業が販売する「明治プロビオヨーグルトLG21」もその1つであり、その商品名にもなっている「LG21乳酸菌」が含まれています。
今回は、このLG21乳酸菌がどのような細菌で、どんな健康効果を身体に与えるかについて紹介します。
LG21乳酸菌について
LG21乳酸菌自体についての紹介です。
名前について
LG21乳酸菌の正式な名称は「ラクトバチルス・ガセリ OLL2716」と言います。
英語表記では「Lactobacillus gasseri OLL2716 または L.gasseri OLL2716」です。
「ラクトバチルス」というのは細菌の属名(グループ名)ですので、この菌は「ラクトバチルス属のガセリ菌」と言えます。したがって、シンプルに「ガセリ菌」という呼ばれ方をする場合も多いです。
ガセリ菌は1種類ではなく、その遺伝子配列によって番号が付けられ区別されています。「OLL2716」というのはその番号の1つです。
LG21の細菌としての性質
ラクトバチルス属に共通の性質として、LG21も以下の性質を持ちます
元々ヒトの腸内に生息しており、製品となっている菌株もヒトから取り出したものを元に培養しています。
酸への強い耐性を持ち、酸に対する防御を行うための様々な機構を備えていることが報告されています。この酸耐性によって胃で活動でき、後述するピロリ菌への効力を発揮することができます。
腸内の常在細菌数は腸内容物1g当たり1012個という膨大な数のため,外からプロバイオティクスとして生菌を108~109個程度送り込んでも腸内フローラのエコシステムを変えるのは容易でない.
これに対して胃内の常在細菌数は非常に少ないため摂取したプロバイオティクスの効果が発現しやすいとも考えられる.
これらの基本的検討を基にヒトにも応用できる菌株を探した結果,得られたのが Lactobacillus gasseri OLL2716(LG21) である.
LG21は耐酸性に優れているためヒトの胃でも生き残って活性を発揮するのが特徴の一つである.
Helicobactor pylori 抑制効果に優れたプロバイオティクスヨーグルトの開発 古賀泰裕, 木村勝紀, 福井宗徳, 新井秀武
LG21乳酸菌による効果
LG21乳酸菌の摂取によってもたらされる健康効果についてです。
ピロリ菌による炎症を抑える
LG21乳酸菌は、先程述べたように酸に強く、胃酸が分泌される環境でも活動できます。そして、胃に生息するピロリ菌による有害な活動を抑えてくれます。
実際にピロリ菌を持つ約30名を対象に行ったLG21入りヨーグルトの8週間の摂取実験では、ピロリ菌の活動を抑制して、胃の粘膜の炎症を防いでいることを意味する結果が得られています(上記文献より)。
この効果が得られる理由は、ピロリ菌が胃の粘膜に感染した際に生成するインターロイキン8(IL-8)という物質を抑えるからであるとされます。
他の乳酸菌でも同様の試験が行われていますが、この最も効果が高かったのがLG21乳酸菌であることが報告されています。
LG21乳酸菌を含むヨーグルトを摂取したヒトの胃を検査した結果、胃粘液層からLG21乳酸菌が検出されたことが報告されているため、継続的な摂取によって胃に定着することが確認できていると言えます。
カンジダ症を防ぐ可能性
カンジダ(C.albicans)による感染症である慢性肥厚性カンジダ症のモデルラットを用いた実験では、LG21乳酸菌を含むヨーグルトの摂取がカンジダの炎症を予防・治療できる可能性が示唆されています。
慢性肥厚性カンジダ症モデルを用い、Lactobacillus gasseri OLL2716 株を含むプロバイオティクスが
C. albicans 感染によって引き起こされる増殖性および炎症性病変に対し、予防および治療効果があることを明らかにした。
摂南大学学術機関リポジトリ Candida albicans 感染による慢性炎症と発癌との関連性の解析
ヒトの場合の実験報告が見つからなかったため、確実なことは言えませんが、LG21はカンジタなどピロリ菌以外の細菌への効果も持つかもしれません。
おしまい
以上、LG21乳酸菌についてとその健康効果についてでした。ピロリ菌への効果は有名ですが、他の細菌による炎症を抑える効果も示唆されています。
明治プロビオヨーグルトLG21は最近の商品かと思っていたのですが、発売は2000年3月だそうで、既に20年近くが経つようです。