朝食に糖質を摂ることが必要な理由 糖質不足で筋肉が分解される

最終更新日時 : 2017年8月23日
バランスの良い朝食

朝食で糖質を摂る必要性についてです。朝食を抜く健康法や糖質制限ダイエットなどが紹介されていたりしますが、脳を最大限働かせるためには朝食は欠かせないものです。

ここでは、なぜ朝食での糖質補給が重要なのかを紹介したいと思います。

糖質とは

砂糖のスティック

糖質は単糖類、多糖類、糖アルコールなど様々な糖類の総称です。栄養成分的には糖質は炭水化物から食物繊維を除いた分です。

糖質 = 炭水化物 - 食物繊維

つまり、炭水化物は、糖質と食物繊維の合計量と言えます。

炭水化物 = 糖質 + 食物繊維

詳しくは以下のページをご覧ください。

糖質 – 健康用語WEB事典

体の中の糖質は寝ている間も消費される

人間は寝ている間にも、呼吸をしたり、心臓を動かしたりしています。寝返りなどで体を動かすこともあります。

また、脳もレム睡眠中には活動を続けています。特に、睡眠の後半では脳はほぼ活動していると言われています。(参考2)

このような活動を行うためには、エネルギーが必要になります。そのエネルギーとして、主に血液中のブドウ糖グルコース)を消費し続けることになります。

脳のエネルギー源として使えるのはほとんどグルコースだけですので、脳が活動するために血液中のグルコースは減り続けます。

すると、血液中の血糖が下がり続けてしまうため、これを補う必要が出てきます。

蓄えられているグリコーゲンで血糖を保つ

そこで、体内では肝臓に貯蓄されているグリコーゲンを分解して、血液中の糖質を補います。(筋肉中のグリコーゲンは、筋肉を動かすためだけに使われるため、血糖を補うためには使われません)(参考3)

睡眠中に血糖が一定に保たれるのは、肝臓のグリコーゲンが分解されてグルコースとして血液に入っていくからです。

起床時には体の中の糖質が減っている

上記のように、睡眠中に体の中の糖質を消費するため、起床時は体内の糖質が減っている状態です。

通常であれば、睡眠前の食事から10時間程度は経過しています。日中であれば、とっくに食事が必要になっている時間間隔です。

もし、食事によって糖質が補充されなければ、体は筋肉のタンパク質を分解して糖質を補充しようとします。

朝食を食べないと筋肉が減る

もし朝食を抜いて、お昼まで何も食べなかったとすると、16時間程度何も糖質を補充しないことになります。

脳が活動するためには、グルコースが必要ですが、睡眠中に肝臓のグリコーゲンはすでに使用してしまっているため、アミノ酸をエネルギー源とするために筋肉を分解せざるを得なくなります

食事制限によるダイエット(減量)がよく行われていますが、食事の摂り方によってはダイエットの成功は難しいかもしれません。
人の体では、まず血液中のグルコースがエネルギー源として使用されます。グルコースが枯渇すると、肝臓中に蓄えられたグリコーゲンがエネルギー源に使われます。
この肝臓中に蓄えられたグリコーゲンもなくなると、糖新生によってアミノ酸がエネルギー源として使われ始めます。糖新生で使われるアミノ酸は主に筋肉を分解して得られます。
そのため、絶食などの無理なダイエットを行うと筋肉が減少し、新陳代謝が減少してしまいます。
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脳の活動も鈍くなるだけではなく、体の必要な器官を分解しなければならないため、健康を損ねる原因となります。さらに、筋肉のタンパク質を分解し続けると、高血圧などの生活習慣病の要因となることが知られています。(参考1)

また、砂糖などの糖質とタンパク質を摂取することで、脳内伝達物質であるセロトニンが分泌されることが知られており、これによって感情の安定効果などがあります。しかし、朝食によって糖質が補充できなければ、セロトニンの分泌量は減るため、精神面でも不安定になる恐れがあります。

空腹時の運動は不整脈の原因となる

空腹時の心臓に起きる不整脈

朝食を食べずに(あるいは食べる前に)運動をすると、血液中に脂肪酸(パルミトレイン酸)が増え、不静脈が誘発されることが知られています。

これが、心筋の急停止などによる突然死に繋がることが報告されているため、朝食を食べる前の起床直後の激しい運動は控えた方がよいと考えられます。

小野らは,56才男子と20才女子の2名に栄養状態を異にする条件下で運動を負荷し,静脈中の遊離脂肪酸濃度がどのように消長するかを検討した.その結果,静脈血中パルミトオレイン酸濃度が急増した時には不整脈が観察され,そうでない時には見られなかった.また,目覚めの食餌を低糖食とした時での空腹時には,パルミトオレイン酸の急上昇による不整脈を発生しやすいと考察を加えている.
L-カルニチンの脂肪酸に対する心筋ミトコンドリア保護作用 矢野博己 Michael J. Kremenik 長野隆男

糖質制限ダイエットのリスクについて

実際に糖質ダイエットを広めていた第一人者である桐山秀樹氏が心不全で亡くなったこともあり、糖質の摂取量を減らすダイエット法には危険があるという指摘があります。摂取するカロリーの半分程度を糖質によって補うことが勧められています。

2016年2月、「糖質制限ダイエット」の第一人者として知られ、短期間に20キロの減量に成功したといわれるノンフィクション作家、桐山秀樹氏が心不全のため60代の若さで急死したと伝えられて波紋が広がりました。

脳や神経細胞などはエネルギー源として糖しか使えませんから、一定量(総カロリーの半分程度)の糖質の摂取は必要です。27万人を対象に糖質の摂取割合が低いグループ(総摂取熱量の30〜40%)と高いグループ(同60〜70%)を比較した調査でも、低いグループの方が死亡率が高いという結果が出ています。
中央公論新社 中川恵一 知れば怖くない 本当のがんの話 (2017/1/15)

中枢神経を働かせるためには、ある程度の糖質摂取は必要ということになります。

参考文献

  1. ”甘み”に関する教育内容の再構成と指導
  2. 第1回 睡眠と記憶について|知っていますか?「勉強に効果てきめんな睡眠」の手に入れ方
  3. 大阪教育大学 糖質の代謝
  4. 炭水化物(PDF) – 厚生労働省
  5. 中央公論新社 中川恵一 知れば怖くない 本当のがんの話 (2017/1/15)

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