健康食品に含まれるプロテオグリカンについて、その化学的な構成と発表されている健康効果についてです。
コラーゲンを保持して肌の保湿・美肌などに効果があるとされますが、どのような原理で美肌に効くのでしょうか。
プロテオグリカンを構成する物質
プロテオグリカンの「プロテオ」はプロテイン、つまりタンパク質のことを指しています。
そして、プロテオグリカンの「グリカン」は多糖を意味する言葉です。
きのこに含まれるβ-グルカンの「グルカン」も多糖を表す言葉ですが、グリカン(glycan)はグルカン(glucan)よりも意味が広いです。
グルカンは通常、グルコースが複数結合することでできる多糖類のことだけを指しますが、グリカンは複合糖質(糖タンパク質や糖脂質など、糖が他の糖以外の物質と結合したもの)のことも含まれます。
つまり、プロテオグリカンは糖類とタンパク質が結合した糖タンパク質です。
厳密には、コアタンパク質と呼ばれるタンパク質に、グリコサミノグリカン(GAG)と言う長く連なった糖(糖鎖)が1本以上結合した物質とされています。
プロテオグリカン(PG)は、グリコサミノグリカン(GAG)鎖と呼ばれる硫酸化多糖がコアタンパク質に結合した構造を持つ巨大糖タンパク質分子の総称であり、組織構築に重要な役割を持つ細胞外マトリックスや細胞表面、細胞内分泌顆粒などに広く存在している。
愛知教育大学 4-アシルアミノガラクトサミン誘導体の合成
プロテオグリカンは、タンパク質と糖鎖(グリコサミノグリカン)が共有結合した複合糖質の一種です。
コラーゲンやヒアルロン酸とならぶ動物の軟骨の主成分でもあり、保水性に優れ、経口摂取も可能な、人体にきわめて安全な素材です。
プロテオグリカンとは – プロテオグリカン応用研究プロジェクト
グリコサミノグリカンには以下の複数の種類があります。
- コンドロイチン硫酸
- デルマタン硫酸
- ヘパラン硫酸
- ケラタン硫酸
- ヘパリン
- ヒアルロン酸
体内ではヘパラン硫酸とコンドロイチン硫酸が主とされます。
動物細胞の細胞表面などに普遍的に存在する生体分子の1つです。コアタンパク質とよばれるタンパク質部分と、グリコサミノグリカンとよばれる多糖鎖部分からなる複合糖質で、代表的なグリコサミノグリカンとしては、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸があります。
プロテオグリカン – 北海道大学 理学部 生物科学科(高分子機能学)
人体内のプロテオグリカン
プロテオグリカンは体内で作られていて、主に軟骨や細胞外基質(細胞の外側を埋める部分)、細胞膜に存在しています。
コラーゲン、ヒアルロン酸などと一緒に存在し、細胞の保持や増殖に関わるとされます。
細胞膜に存在するプロテオグリカンは伝達物質を細胞内に伝えるための受容体(レセプター)としての働きを持ちます。
細胞外マトリックスは,コラーゲン線維,弾性線維等の線維成分とその間隙を埋めるヒアルロン酸,プロテオグリカン等の分子群から構成され,細胞を支持し栄養を与えるのみならず,生理活性分子を貯留したり濃度勾配を形成するなどして細胞の増殖・分化を制御しています。
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プロテオグリカンは,コアタンパク質と呼ばれるタンパク質に1本以上のグリコサミノグリカン鎖と呼ばれる糖鎖が共有結合した分子群と定義されます。プロテオグリカンは細胞外マトリックスのみならず細胞膜上にも存在し,コレセプターとして細胞へのシグナル伝達を調節制御しており,この機能は主としてグリコサミノグリカンと呼ばれる糖鎖が担っています。
分子医科学研究所 | 愛知医科大学
気管支軟骨基質のプロテオグリカンはコンドロイチン硫酸が主成分である。
軟骨細胞から分泌され軟骨基質を埋める。
結合組織基質(細胞外マトリックス)
これらのことから、プロテオグリカンが細胞の隙間を埋め、皮膚の弾力性に影響を与える可能性があります。
プロテオグリカンの特徴
プロテオグリカンが持つ特徴についてです。
高い保湿性
ヒアルロン酸と比べて、30%以上高い水分保持ができるとされています。(彩知株式会社・株式会社 ビジネス・プロデュースの資料より)
弾力・シワ・たるみ改善効果
実際に肌に効くと言う根拠となっているデータについてです。
彩知株式会社、株式会社ビジネス・プロデュース、一丸ファルコス株式会社が以下の表をプロテオグリカンの効果の根拠として発表しています。
この表によれば、プロテオグリカンは他のコラーゲン成分などに比べ、少量でも高い弾力・シミなどの改善効果があると言えます。
実際に、表皮細胞増殖促進作用やコラーゲン産生促進作用が実験に確認されています。
プロテオグリカンの美容効果に関する試験データ|一丸ファルコス株式会社
腸内環境の改善
プロテオグリカンは腸内環境の改善効果も示唆されています。また、主に小腸から吸収されることが確認されています。
中根氏は、「プロテオグリカンは、動物試験も含め、潰瘍性大腸炎や関節炎、アレルギー性疾患などへの効果が示唆されている(図1)。これら疾患の”火元”には、炎症反応が関与している。プロテオグリカンが善玉菌優位の環境に腸内を変えることで、腸管の免疫細胞の働きを正常化。過剰な炎症を抑制することで、全身の免疫系に影響を与え、生体の恒常性維持に働くと考えられる」と話す。
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腸内に届いたプロテオグリカンは、その後、どうなるのか?こうした視点でアプローチしているのが、サケ由来のプロテオグリカンを機能性素材として提供する角弘と一丸ファルコス、東北女子大学の研究グループ。ラット腸管を用いた吸収試験で、プロテオグリカンが腸管から吸収されることを確認。特に、小腸の一部である空腸での吸収量が有意に高いことが明らかになった(図2: Biosci. Biotechnol. Biochem., 77(3), 654-656.)。
作用機序解明が進むプロテオグリカン 今後の重点テーマは臨床応用、弘前大 | Kenbiニュース | ニュース&コラム | 健康美容情報ナビ
プロテオグリカンに関わる食品
牛乳に含まれるタンパク質のひとつであるCBPが、体内でプロテオグリカンの合成を促進させ、膝関節の炎症を改善することが確認されています。
CBP(乳清活性たんぱく)は、牛乳や母乳に含まれる天然のたんぱく質です。当社が独自に行った研究によって、軟骨成分である「プロテオグリカン」の合成を促進させることをこれまで
に明らかにしていました。
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本試験の結果、CBP(乳清活性たんぱく)を配合したグルコサミン・コンドロイチン・コラーゲン含有サプリメントされました。また、同サプリメントの摂取により、血中の改善効果の作用メカニズムの一端が膝部位の炎症を緩和させるものである可能性が示されました。
株式会社DHC 世界で初めて CBP をサプリメントに配合した DHC の研究成果 CBP(乳清活性たんぱく)配合サプリメントが膝関節痛の改善に有効であることを確認
おしまい
現在は、サケ鼻軟骨から大量にプロテオグリカンを精製する技術が確立されているようです。
このおかげで、プロテオグリカンを含む健康食品や化粧品も様々なものが販売されています。
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