血液型占いや性格診断、血液型相性などを見たことがある方が多いと思います。しかし、血液型の意味を知っていれば、これが迷信でデタラメであることは明らかです。
血液型には大きく分けてABO式血液型やRh血液型、MN式血液型などがありますが、今回は、ABO式血液型の意味と、血液型による性格分類に根拠がない理由について紹介します。
ABO式血液型の意味 輸血の事故を防ぐ
ABO式血液型(ABO血液型)は、オーストリアのウィーン生まれの学者「カール・ラントシュタイナー」によって発見・定義されました。
具体的には、ある人の血清(血液の血球以外の成分、血液を凝固させたときに固形分を除いた残りの水溶成分)と他の人の赤血球を混ぜると、血液が凝固する場合としない場合があることを発見し、その組み合わせをまとめました。
血液型 | 赤血球上の抗原 | 血清中の抗体 |
---|---|---|
A型 | A | 抗B抗体 |
B型 | B | 抗A抗体 |
O型 | なし | 抗A抗体、抗B抗体 |
AB型 | A、B | なし |
発見当初はあまり評価されなかったようですが、のちに輸血時に血が固まってしまう事故の原因が血液型に関係あることがわかりました。
血液型の違う血液を輸血した場合、抗原抗体反応を起こすことによって血液が働かなくなってしまいます。
例えば、A型の人にB型の血液を輸血した場合、A型の人が持つ抗B抗体がB型赤血球上のB抗原に反応して、輸血した血液が抗体によって攻撃されて破壊されてしまいます。
残念ながらLandsteinerの論文はドイツ語を読めるひとが少なかったことや、基礎医学の研究と考えられたため、まったく評価されなかった。
10年ほど後に米国のMossらが、これまでの輸血の死亡事故の主因はこの血液型不適合によるものであろうと、Landsteinerの知見を輸血に導入することを提唱して、初めてLandsteinerの業績が評価された。
”血液型”についてのいろいろ 第7回 血液学を学ぼう!
ABO式血液型についての理解がなかった時代は、輸血の成功率は50%程度だったと言われています。血液型についての理解が深まり、クエン酸ナトリウムなどの抗凝固剤が発見されたことで、輸血が安全に行えるようになりました。
型のA、Bという名前は、血液が凝集した順番を表しているだけです。O型は、血液が固まらなかったことから「0(ゼロ)型」と名付けられてたものが転じて「O(オー)型」となったそうです。
なぜA型の人が抗A抗体を持たないかというと、自分の赤血球上にA抗原を持っているため、もし抗A抗体を持ってしまったら、このA抗原に対して免疫が働き、自分で自分を攻撃してしまうことになってしまうからです。B型やAB型の人も同様です。
しかし、O型はA抗原、B抗原のどちらも持たないため、どちら対しても抗体を作ることができます。つまり、血液型は血清に含まれる抗体と赤血球の抗原のタイプを表しているだけであって、性格などに影響を与える要素はありません。昔はそういった説がありましたが、現在は否定されています。
ちなみに、骨髄は輸血の場合とは異なり、型の違う血球を作り出すものでも移植することができます。したがって、骨髄移植を行うと血液型が変化する場合があります
白血病をわずらっていた市川團十郎が平成20年12月に復帰し、「象引」という演目を演じるというテレビ報道があった。
…
團十郎は妹から骨髄移植を受けたそうだ。その結果、團十郎の血液型であるA型が、妹さんの血液型のO型に変わったという。奇妙に聞こえるかもしれないが、輸血とは異なり、骨髄移植は血液型の違う人からでも受けることが可能である。ABO血液型ではなく、白血球の型であるHLAが大切なのだ。
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血液型占いがあるのはアジア圏のみ
例えば、フランスやブラジルなどではB型、AB型の人はほとんどいません。ペルーの原住民はO型しかいません。
出典: ”血液型”についてのいろいろ 第7回 血液学を学ぼう!
もし血液型で性格が決まるとしたら、ペルー原住民はみんな同じような性格の人しかいないことになりますがそんなことはあり得ません。
また、白人にはAB型が少なかったため、当初は分類になかったそうです。
血液型性格判断の歴史
なぜ血液型と性格が結びつけられるようになったのでしょうか。
歴史的には、1927年に出された学説が元となり、1971年に性格との結びつけが行われたようです。
血液型性格判断の歴史は古く、1927年に古川竹二が出した学説まで遡る。もっとも古川学説は現在の血液型隆盛とは基本的に関係ない。
現在の血液型性格判断に直接つながるのは1971年に出版された能見正比古の著書である。能見は学者ではなく、血液型に関する学術論文を書いたわけでもなさそうだ。その代わり、能見と息子の俊賢は血液型に関する多くの一般書を出版している。さて、現在の位置づけを簡単に述べよう。心理学の問題としては解決済みで、「血液型と性格が関連するという積極的な証拠はない」ということでよいだろう。つまり、能見説にせよ古川説にせよ、間違っていたわけである。
大阪大学サイバーメディアセンター 菊池誠 ニセ科学入門
血液型によって感染の受けやすさは変化しない
O型の人は、赤血球にA抗原もB抗原も持っていないため。抗A抗体と抗B抗体を両方持つことができます。なので、このうちの片方しか持たないA型やB型、両方持たないAB型の人に比べると、感染に対して強そうな印象を受けます。
しかし、実際のところは感染の受けやすさに違いはないようです。免疫学的にも、血液型による優劣があるわけではありません。
ついでに言及すると、血液型によって細菌感染の受けやすさにとくに違いはない。すなわち、抗-A抗体や抗-B抗体は、感染防御にはさして重要ではなさそうである。
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誤った考えやハラスメントに繋がる危険性
血液型で性格や行動などを枠に当てはめるのは、様々な問題を招くと大学や放送倫理機構で危険視されています。
場合によっては嫌がらせ行為(ブラッドタイプハラスメント)となります。
血液型をめぐるこれらの「考え方や見方」を支える根拠は証明されておらず、本人の意思ではどうしようもない血液型で人を分類、価値づけするような考え方は社会的差別に通じる危険がある。血液型判断に対し、大人は“遊び”と一笑に付すこともできるが、判断能力に長けていない子どもたちの間では必ずしもそういうわけにはいかない。こうした番組に接した子どもたちが、血液型は性格を規定するという固定観念を持ってしまうおそれがある。
2004年12月8日 | BPO | 放送倫理・番組向上機構 |
しかし、ブラッドタイプハラスメントという単語まで生まれたように、疑似科学でしかない血液型性格分類が流布することによって、現実に不愉快な思いをしている人がいる以上、マスコミ関係者は己が社会に与える影響を再認識し、反省する必要がある。そして、科学者達は疑似科学が一人歩きしないよう、説明責任を果たしながら、健全に社会と科学の橋渡しをする努力しなくてはならない。
先端生命科学専攻 ― 東京大学大学院新領域創成科学研究科
明らかに遊びの範疇を超えた事例も報告されています。
血液型性格判断など、遊びだからいいじゃないか、という人をよく見かけますが、現実には血液型による就職差別や配属差別なども起きています。お隣の韓国でも最近は血液型性格判断がブームで、激しいB型バッシングがあったと聞きます。
もちろん、仮に血液型と性格のあいだに関連があったとしても、それによる差別はあってはならないことです。まして、血液型性格判断は否定されています。差別につながるものであることは認識しておいてください。
ニセ科学とつきあうために 菊池誠 (大阪大学サイバーメディアセンター)
血液型は無数の種類が存在する
血液型は、輸血で重要となるABO血液型とRh血液型がよく話題となりますが、見方を変えると血液を分類する方法は非常に多くあります。
血液型はABO型、Rh型だけではない。ほかにもMNSs、ルイス、ダフィー、P、I、キッドなどなど、50種類以上もの型がある。そして、それぞれの型には1〜4タイプがあり、しかも亜型や変異型もある。このため、血液型だけから分類すれば、人類は天文学的な数のタイプに分けることができる。人間の性格をABO血液型のたった4タイプで分けること自体、まったく意味のないことがおわかりだろう。
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おしまい
未だにマイナスイオンや水素水のような擬似科学や迷信が正されていないことが多々あります。それがどのように定義されているのかを理解することで、迷信かそうでないかを区別することができます。