ミツバチが作るローヤルゼリーというものが、よく健康食品や化粧品などで売りにされているのを見ます。
今回は、ローヤルゼリーの実態や健康への影響について調べてみました。
ローヤルゼリーとは
ローヤルゼリーの実態についてです。
ローヤルゼリーはミツバチが花粉や蜂蜜を体内で分解合成して唾液腺から分泌する物質です。
そのため、ミツバチの唾液に含まれています。
詳しくは後述しますが、ミツバチが女王蜂となるために必要な物質を含むとされています。
同じ遺伝子型をもつ雌の幼虫のなかでも王台という女王蜂を育てるための部屋で成育した個体は、働き蜂の分泌するローヤルゼリーを摂取して女王蜂へと分化する。一方、通常の巣房で成育した個体は、ハチミツや花粉などを摂取して働き蜂へと分化する。
ミツバチの女王蜂分化誘導因子ロイヤラクチンの発見
実は、この「ローヤルゼリー」という名称は特定の物質の名前ではなく、様々なビタミン・ミネラル・アミノ酸・タンパク質などの混合物のことを指す名前です。
ローヤルゼリーには8種類の必須アミノ酸を含む14種のアミノ酸やビタミン類,カルシウムやマグネシウムなどのミネラル,さらに他の食品には存在しないカルボン酸の一種であるデセン酸(10‐ハイドロキシ‐δ‐2‐デセン酸)や唾液腺ホルモンの類パロチン,そしてタンパク質であるロイヤルシンやアピシンなどを含む。
岐阜女子大学家政学部家政学科管理栄養士専攻 ローヤルゼリーの摂取がラット消化管組織に与える影響
ローヤルゼリーという名前の成分があるわけではありません。
ローヤルゼリーの健康効果
ローヤルゼリーを摂取した際に期待できる効果についてです。
認知症の予防
以前柑橘類に含まれるノビレチンという物質に、アルツハイマー病などの認知症を予防する効果があることを紹介しました。
ローヤルゼリーにも認知症の予防効果があり、さらにこのノビレチンの働きを強化する作用があることが確認されています。
ノビレチンを活用した機能性食品開発の為に、ノビレチンの作用を増強することの出来る天然資源を探索したところ、ローヤルゼリーにノビレチンのCRE依存的転写活性上昇作用を増強することが明らかになりました(Fig. 1)。
そればかりではなく、ローヤルゼリー自身にも顕著なCRE依存的転写活性上昇作用を有することを発見しました(Fig. 2)。このことから、 ローヤルゼリーもノビレチンと同様にアルツハイマー病治療に有効な生薬資源のひとつであることが証明されました。
ローヤルゼリーに数種の天然物(シークァーサー、イチョウ葉、紅景天、フェルラ酸)を混合することにより、単独使用に比べて相乗作用が認められました。
ローヤルゼリーとは┃抗認知症機能性食品開発部門┃東北大学
自己免疫疾患の予防
自己免疫疾患と呼ばれる、自分自身の体を攻撃してしまう病気にローヤルゼリーは効果があることが報告されています。
具体的な自己免疫疾患は、リウマチや全身エリストマーデスなどです。
佐藤良也名誉教授は多くの花の種類から採取した蜂蜜、特にローヤルゼリーの効用に注目して医療に生かすことを試みてきた。図1は代表的な自己免疫疾患の全身性エリテマトーデス(SLE)を起こさせたマウスにローヤルゼリーを与えた場合、生存率が大幅に上がることを示す。図2はローヤルゼリー投与後に抗核自己抗体や抗赤血球自己抗体産生量が抑制されて自己免疫疾患の予防につながるデータである。
(図1、図2については以下の出典元サイトを御覧ください)
国立大学法人 琉球大学 “亜熱帯特有”とっておきの知財(3) 自然から学(1):ローヤルゼリーの威力を活かした自己免疫疾患治療に
様々なタンパク質を含む
ローヤルゼリーにはアピシンと名付けられたタンパク質が10%程度含まれています。
アピシンの名前の由来はミツバチの学名である「アピス」だそうです。
別名としてMRJP1(Major Royal Jelly Protein 1, 主要ローヤルゼリータンパク質1)とも呼ばれます。
化学的にはタンパク質にマンノースという単糖が結合した「糖タンパク質」と呼ばれる物質です。
このタンパク質には細胞死を抑制する効果が報告されており、医療分野への応用が期待されています。
ローヤルゼリーから発見したタンパク質アピシンを培養した細胞に加えると、細胞は約3倍に増え、5日後でも生き続けていました。一方アピシンを加えないと、栄養素があるにもかかわらず細胞は増殖せず、死んでしまいました。これから、アピシンには細胞の増殖を促し、細胞死を防ぐ作用があることがわかりました。
茨城大学 農学部 資源生物科学科 ローヤルゼリータンパク質
ローヤルゼリーからタンパク質を分離精製し、分子量35万の糖タンパク質を発見し、「アピシ
ン」と命名しました。アピシンは分子量58,000の構成単位6個から成り立っており、マンノースのオリゴ糖が結合しています。
アピシンにはヒトや動物の培養細胞に対して増殖促進作用や細胞死抑制作用があります。
ローヤルゼリータンパク質の生理機能の解明
さらに、コレステロールの分解を促進したり、吸収を抑制したりすることで血清コレステロールを低下させる効果が報告されています。
MRJP1やMRJP1由来ペプチドがラットやヒト肝臓培養細胞でコレステロールの分解を促進するとともに,MRJP1がラットによる動物実験やヒト腸培養細胞でコレステロール吸収を抑制することを発見。
ラットによる動物実験(in vivo実験)により,MRJP1は,特定保健用食品許可成分である大豆タンパク質や植物ステロールよりも,効果的に血清コレステロールを低下させることを発見。
【研究成果】ローヤルゼリーのコレステロール代謝改善作用を発揮する物質を特定 -株式会社秋田屋本店(岐阜市)との共同研究成果-|お知らせ | 国立大学法人 岐阜大学
ミツバチを女王蜂にする直接的な要因となる物質もMRJP1に関わるタンパク質であり、その名前をロイヤラクチンと言います。
ロイヤラクチン以外のタンパク質には、女王蜂に成長させる効果が無かったことが実験により確かめられています。
40℃で30日間保存したローヤルゼリーを含む培地に精製したロイヤラクチンあるいは450kDaタンパク質を添加し、ミツバチの幼虫を飼育したところ、ロイヤラクチンだけがミツバチの体サイズの増加、発生期間の短縮、卵巣管の増加を誘導し、女王蜂への分化を促進した
(図1B)。
また、同様の効果は大腸菌で発現させた組換えロイヤラクチンでもみられた。…
ロイヤラクチンは、mrjp1(major royal jelly protein1)遺伝子の産物であり、57 kDaの単量体からなる糖タンパク質である。
ミツバチの女王蜂分化誘導因子ロイヤラクチンの発見
MRJPは複数の種類が確認されており、MRJP1からMRJP5までがあることがわかっています。
そして、その種類によって異なる性質を持つことが確認されています。
例えばMRJP3には大腸炎に対する効果が示唆されています。
MRJP-3というタンパク質には、モデル動物実験で潰瘍性大腸炎に対して、抑制効果があることがわかってきました。
食品分子機能学研究室 主要ローヤルゼリータンパク質の生理機能の解明に関する研究
ローヤルゼリーのアレルギー
上記のような効果があるローヤルゼリーですが、実はローヤルゼリーアレルギーがあります。
前述した、ローヤルゼリーに含まれるタンパク質がアレルギーの原因となるようです。
ローヤルゼリーアレルギー患者の血清IgEと反応したローヤルゼリータンパク質2種類のアミノ酸配列を解析。これらが Major Royal Jelly Protein 1(MRJP1, 別名:アピシン)および Major Royal Jelly Protein 2(MRJP2)であることを突き止め、ローヤルゼリーの主要なアレルゲンがアピシンおよびMRJP2であるという知見を裏付けました。
酵素分解ローヤルゼリー – みつばち健康科学研究所
これに対処するために、アレルギー反応が起きにくい分解酵素ローヤルゼリーというものが研究されています。
おしまい
MRJPの全てについて調べることはできませんでしたが、様々な健康効果が報告されていることがわかりました。
ローヤルゼリーを配合したハチミツも販売されているようです。
シークワーサーなどの柑橘類と一緒に摂ると、高い認知症の予防効果が得られるかもしれません。