冬の寒い時期は暖かい甘酒を飲むと落ち着きます。
甘酒は「飲む点滴」と呼ばれる場合もありますが、どんな栄養が含まれているのでしょうか。
今回は、甘酒についてと、甘酒に含まれる栄養成分について紹介します。
甘酒とは
甘酒は、酒を作る過程でできる酒粕や麹を使って作る飲み物です。
国内において、平安時代以前から飲まれていたようです。
甘酒の歴史は古く,既に平安時代には飲用されていた記録が残っている。当時の甘酒は,麹と飯米とを混ぜて作る「麹甘酒」であった。一方,近年関西地方を中心に,酒粕と米麹を混ぜてつくる「酒粕甘酒」も広く飲用されるようになってきた。現在では,一般的に食料品店で購入できる甘酒は,ほとんどが「酒粕甘酒」になっている。
CiNii 論文 – マウス試験による甘酒の機能性評価
一言で甘酒と言っても「酒粕甘酒」と「麹甘酒」の2種類があります。
発酵ブームということで、甘酒も話題に上ることが多くなっていますが、常に問題になるのが、酒粕からつくったもの(ここでは「酒粕甘酒(さけかすあまざけ)」とします)と、麹からつくったもの(同「麹甘酒(こうじあまざけ)」)の区別です。スーパーには森永製菓の「甘酒」が並んでいますが、これは「酒粕甘酒」で、「麹甘酒」の方は酒蔵などが造っているマイナーなブランドのものが大半でしょう。
オープンキャンパス2013「甘酒の微生物学」(その1) | News & Topics | 京都学園大学 バイオ環境学部 微生物機能開発学研究室
まず、その違いについて紹介します。
酒粕甘酒について
酒粕甘酒というのは、酒の原料(米など)に含まれるデンプンがアルコールになったあと、そのアルコールを搾ったときに残るアルコール以外の物質(これが酒粕です)をお水に溶かした飲み物です。
家庭では、広く市販されている酒粕(板粕)を使って簡単に甘酒を作ることができますので、この酒粕甘酒を飲む機会が多いかと思います。
酒粕自体には糖分があまり含まれませんので、砂糖などで味付けをすることになります。
ちなみに、酒粕自体にアルコールがいくらか含まれる場合がありますが、加熱することで取り除くことができます。
酒粕の使用方法として甘酒や粕汁、粕漬けは定番ですが、そのほかにもホワイトソースやパン、ケーキなどにも応用することができます。ただし酒粕にはアルコール分が8%程度含まれています。加熱調理することによってアルコールを飛ばすことができますが、お酒に弱い方や小さいお子様が召し上がる時は、加熱時間を長くしてアルコールを十分に飛ばすなど、注意するようにして下さい。
酒粕 – えひめ医療生協(しんぶん) 健康づくり・明るいまちづくり えひめ医療生協
麹甘酒について
米麹(麹菌を米に付着させたもの)から作られる甘酒です。
麹甘酒を家庭で作るには、米麹を米に混ぜて炊飯器で炊くなどの工程が必要になります。
場合によっては麹甘酒のことを麹ドリンクや甘麹などとして、前述の酒粕甘酒と区別する動きもあるそうです。
酒粕甘酒との違いは、デンプンがグルコース(ブドウ糖)に変化するところで反応を止める点です。
デンプンからアルコールが生み出されるには、デンプンがまずグルコースに分解されなけでばいけません。
このグルコースに分解されたところで反応を止めることで、アルコールが生成されずに済みます。
これによってアルコールを含まず、グルコースを含む甘酒となります。グルコースを含むので味付けをしなくてもほんのり甘いです。
甘酒の栄養
甘酒に含まれる五大栄養素についてです。
出典: し好飲料類/甘酒(100g)
出典となっているデータベースのタイトルには「甘酒」としか書かれていませんが、これは麹甘酒の栄養素です。
栄養 | 量 | |
---|---|---|
水分 | 79.7g | |
タンパク質 | 1.7g | |
脂質 | 0.1g | |
炭水化物(うち食物繊維) | 18.3g(0.4g) | |
ミネラル | ナトリウム | 60mg |
食塩相当量 | 0.2g | |
カリウム | 14mg | |
カルシウム | 3mg | |
マグネシウム | 5mg | |
リン | 21mg | |
鉄 | 0.1mg | |
亜鉛 | 0.3mg | |
銅 | 0.05mg | |
マンガン | 0.17mg | |
ビタミン | B1 | 0.01mg |
B2 | 0.03mg | |
ナイアシン | 0.2mg | |
B6 | 0.02mg | |
葉酸 | 8μg |
元が米のデンプンですので、炭水化物(糖質)が豊富です。
水分が80%、炭水化物が18%程度を占めます。麹甘酒はブドウ糖液に近く、タンパク質や脂質が少ないようです。
食品データベースには酒粕甘酒の栄養成分表はありませんでしたが、以下のサイトで酒粕の栄養成分から酒粕甘酒の栄養成分を計算した表が公開されています。
それによると、以下のことが言えるとされています。
酒粕のほうはあくまで「酒粕」として載っているので、酒粕甘酒のデータはありません。仕方ないので酒粕を水分含量79.7%になるように水で薄めたとして計算したもの(図中「酒粕×0.415」とあるもの)、と比較してみることにします。すると、
○麹甘酒はたんぱく質や脂質が少ない(ブドウ糖液に近い)(表1)
○麹甘酒の方がナトリウム、リンなどの無機イオンに富む(表2)
○どちらもビタミンを含むが、量的には(酵母の入っている)酒粕の入っている甘酒の方が多そう(表3)ということが分かります。
…
麹甘酒の糖(炭水化物)は約80%がブドウ糖で、残りが種々のオリゴ糖(この場合はブドウ糖の分子がいくつかつながったもの)であることが報告されています(右図)。
オープンキャンパス2013「甘酒の微生物学」(その3) | News & Topics | 京都学園大学 バイオ環境学部 微生物機能開発学研究室
特にビタミンB類などは、酒粕甘酒の方が多めです。
ちなみに、甘酒は飲む点滴と言われますが、上記サイトの表からは、そこまで栄養成分が似ているようには見えません。
おそらくグルコースが多いという点が似ているのではないかと言われています。
ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源であり、輸液にも(砂糖ではなくて)ブドウ糖が入っています。ここまでブドウ糖ばかり入っている飲料というのは他にない(ブドウジュースは同じくらいの量の果糖(スクロース)を含む(pdf))でしょうから、無機イオンを含むこととあわせて、「飲む点滴」と呼ばれるようになったのでしょう。
オープンキャンパス2013「甘酒の微生物学」(その3) | News & Topics | 京都学園大学 バイオ環境学部 微生物機能開発学研究室
甘酒の健康効果
甘酒には基本的な栄養の他に、様々な効果を持つ成分が見つかっています。
例えば、酒粕甘酒では肥満や血圧上昇を防止する効果や物忘れを予防する効果などがマウスによる実験で確認されています。
甘酒の有効物質と作用メカニズムについて言及すると,まず抗肥満作用については,酒粕の乾燥重量の10%余りを占める食物繊維が寄与している可能性が考えられた。また血圧上昇抑制の一因としては,酒粕由来のACE阻害ペプチドが関与していると推察された。
健忘症抑制効果についても酒粕由来のPEP阻害ペプチドが,脳内においてスコポラミンの作用を打ち消す働きをしている可能性が示唆された。このようにスコポラミン誘発型健忘症を抑制する物質は,アルツハイマー病や老化による記憶力の低下だけでなく,若年性の健忘症の予防や改善にも効果があると言われている。
CiNii 論文 – マウス試験による甘酒の機能性評価
このように、記憶力の低下や認知症を予防する可能性があることが確認されています。
一方、麹甘酒には、アレルギーや骨粗鬆症の予防効果を持つ物質が含まれていることが示唆されています。
米麹にも有用な生理活性を持つ物質が報告されている。山田らは,米麹に含まれるエポキシコハク酸誘導体が,カテプシンLを特異的に阻害することを報告している。カテプシンLはアレルギーの発症や骨粗しょう症に関与するプロテアーゼであり,その阻害剤はこれらの疾病の予防効果が期待される。
CiNii 論文 – マウス試験による甘酒の機能性評価
おしまい
今まで個人的には「甘酒 = 酒粕甘酒」だったのですが、麹甘酒というのがあることを知りました。機会があれば、麹甘酒も作ってみたいと思います。
酒粕は甘酒にして飲むだけではなく、食品の酒粕漬けを作れるので様々な楽しみ方ができます。食べる甘酒(生甘酒)というのもあるみたいです。