冬から春にかけてはノロウイルスやインフルエンザウイルスなど、ウイルスによる感染症が毎年流行ります。
この間、乳に含まれるラクトフェリンがノロウイルスに効果がある、という話を聞いたので、詳しく調べてみました。
ノロウイルスについて
ノロウイルスとはどんなもので、感染するとどのような症状が出るかについて簡単に紹介します。
ノロウイルスの概要
ノロウイルスは、ウイルス性胃腸炎の原因となるカリシウイルス科のウイルスを指す属名です。あるウイルスを指す名前ではなく、厳密には属名です。
実際に感染を起こしているウイルス自体の名前は「ノーウォークウイルス」です。
普通、ノロウイルスと言えば、このノーウォークウイルスのことを指します。(この記事では、ノロウイルスと書きます)
なお、我々が通常使用している“ノロウイルス”という呼び名は、ウイルス属名を示すものであり、ウイルス種名を示すものではない。
ノロウイルス属に他のウイルス種が発見されると、この呼び方を改める必要が出てくるが、マウスに感染するノーウォークウイルスをマウスノロウイルス(Murine Norovirus)と呼ぶこと、ノーウォークウイルスを表す言葉として、ノロウイルスが多くの学術論文に使用されていること、この慣例に従い、以降本稿ではノロウイルス(NoV)を使用する。
ノーウォークウイルス(ノロウイルス)の遺伝子型(2015年改訂版)
また、2002年以前はSRSV(小型球形ウイルス)と呼ばれていました。
しかし、これも広い範囲のウイルスを指す言葉であったために、呼び方の変更が行われました。
しかし,この SRSV という意味は,「なんだかよくわからんけど球形のちっちゃいウイルス」という類のものであり,現在ノロウイルスといわれている種類以外にも,SRSV に含まれてしまうウイルスがあるなど,正確な分類による名称ではない.
その後,ウイルスの同定技術や検出技術の向上によって,食中毒患者から非常に頻繁に検出されるウイルス種を確定することができ,名称の統一化を行おうという流れから,2002 年に正式に命名されたものである.
お茶の水女子大学大学院 人間文化研究科 大瀧雅寛 ノロウイルスについて
ノロウイルスは、小型のRNAウイルスで直径が30~38ナノメートル(1ナノメートルは、1ミリメートルの1000分の1)で、形は正20面体の球形です。
以下はノロウイルス(ノーウォークウイルス)を顕微鏡で見た画像です。
ノロウイルスは変異しやすく、一度かかっても再度かかる可能性が高いウイルスです。
ノロウイルスの感染経路
主に牡蠣などの二枚貝、または、それに触れた食材から感染します。
特に牡蠣が原因になる件数が圧倒的に多く、それをよく食べる12月〜3月に流行します。
牡蠣によって感染が起こるのは、牡蠣がノロウイルスを体内に溜め込むからです。
カキなどの二枚貝には海水をろ過するとき、ノロウイルスを濃縮してしまう性質があり、体内にウイルスをため込むことがあります。
緊急追跡ノロウイルス 新型対策&予防法SP – NHK ガッテン!
感染力が強く、10~100個程度の少数のウイルスでも発症するとされています。
潜伏期間は1~2日(最短で8時間)で、症状は突然下痢や嘔吐、腹痛などが起きます。
さらに、症状が回復した後も、2〜3週間は便にウイルスが排出されるため、集団感染に注意が必要です。
残念ながら、現在はワクチンや特効薬がないため、治療は対症療法のみです。
ノロウィルスは温度85℃以上で1分間以上加熱すると死滅するので、貝類を食べるときはよく加熱しましょう。
ラクトフェリンについて
ラクトフェリンは、哺乳類の乳や唾液などに含まれるタンパク質です。
人間の母乳(特に初乳)にも多く含まれており、乳幼児の抵抗力を高める役割を果たしていると考えられています。
病原性の微生物に対する感染防御作用や免疫調節作用などがあることから、ラクトフェリンを含む製品などが開発・販売されています。
残念ながら、牛乳にはわずかしか含まれていないようです。
牛乳に含まれる成分に関しては以下の記事を御覧ください。
ラクトフェリンのノロウイルスへの効果
森永乳業株式会社と麻布大学獣医学部、名古屋大学農学部の共同研究から、細胞単位や動物、人間におけるラクトフェリンのノロウイルスに対する効果が確認されています。
1)細胞実験
LF及びそのペプチドは、ノロウイルスの細胞への付着を阻害する、細胞にウイルス増殖抑制物質であるインターフェロン・アルファ/ベータ(IFN-α/β)の産生を誘導する、細胞内でノロウイルスの脱殻を阻害する、の3つのメカニズムにより抗ノロウイルス作用を示す可能性が考えられている。
2)動物実験
正常なマウスにLFを経口投与すると、ノロウイルスの感染部位とされる小腸において、IFN-α/βの遺伝子発現とタンパク質産生が促進することが報告されている。
3)ヒト試験
保育園児を対象とした試験では、LF配合食品の摂取(400mg/日、16週間)によりノロウイルス胃腸炎の発症率が有意に低下したことが報告されている。また、LF配合食品(100mg/本)を日常的に摂取している人を対象とした追跡調査では、摂取頻度が高い人ほど冬の間にノロウイルス胃腸炎と診断された人の割合が有意に低いことが報告されている。
ノロウイルス等の腸管感染に対する “ラクトフェリン”の抑制作用とメカニズムに関する最新研究
LFはラクトフェリンのことです。
人間においても、ラクトフェリンを配合した食品を摂取していると、ノロウイルス胃腸炎の発症率が下がることが報告されています。
ラクトフェリンのその他の効果
ラクトフェリンには、皮膚の表皮細胞におけるヒアルロン酸の生産量を増加させる効果があることが確認されています。
また、肌に弾力を持たせるタンパク質であるエラスチンの前駆体であるトロポエラスチンのmRNAを増加させることもわかっています。
実際にラクトフェリンを合成した化粧品を一ヶ月間使用した実験では、保湿効果が確認され、シワの深さも改善されるという結果が報告されています。
日本ラクトフェリン学会ニュースレター 第18号 2016年11月
他にも脂肪の分解促進効果などが報告されていますので、興味のある方は上記のページをご覧ください。
関連商品
ラクトフェリンを含むヨーグルトやサプリメントが販売されています。
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