発送電分離とは? 電力自由化との関係とその目的

最終更新日時 : 2017年1月4日
電力会社と送電設備

電気事業連合会によりますと、2020年4月から法的分離(後述)による発送電分離が行われるとされています。

2015(平成27)年6月に、電力システム改革の第3弾として、電気事業法が改正され、2020(平成32)年4月より、送配電部門の中立性を一層確保する観点から、法的分離による発送電分離が行われます。
発送電分離 - 電力システム改革 | 電気事業連合会

具体的には、発電(発電所などで電気を生産する)と送配電(発電によって生産した電気を消費者に送る)を別の会社が行う体制にする、ということです。

発送電分離

当社を含む電力会社の送配電部門を別の会社に分離することで、送配電ネットワークを公平に利用できるようにします。
法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保 [関西電力]

この発送電分離が行われるということはどういうことなのか、私たち利用者にとって何が変わるのか、ということについて紹介します。

発送電分離の目的

まず、何のために発送電分離を行うかということについてです。

電力自由化を進める

電力自由化それ自体は2000年から進められている政策ですが、2011年の東日本大震災による原発事故やそれによるエネルギー確保の懸念が広がったことから電力自由化を進める動きが強まったと言われています。

実際には2016年4月からの電力小売り全面自由化をはじめとする、電力自由化が行われています。

現在の電力会社が行なっている電力供給システムは、発電部門(発電所)と送配電部門(発電した電気を利用者に届ける)、そして小売部門(消費者とのやりとり)の3つに大きく分けることができます。

元々発電部門への参入は自由でしたが、この電力小売り全面自由化によって小売部門への新規参入が解放されることになりました。

発送電分離は、この電力自由化の動きの一つです。

発送電分離と電力自由化の関係の詳細や電力自由化の目的については後ほど詳しく紹介します。

再生可能エネルギーの普及

再生可能エネルギーとは、主に自然のエネルギーを電力に変えるものです。

具体的には、太陽光や太陽熱、水力、風力、バイオマス、地熱、潮力など、利用しても再生が可能なエネルギーです。

通常、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによって発電した電力は、電力会社に買い取ってもらい、電力会社の送電網を使って、電気を送電してもらいます。再生可能エネルギーは、火力、原子力などの既存の発電方式に比べると、発電効率は低く、発電コストが高くなります。そのため、再生可能エネルギーの利用拡大を図るには、政策的な補助によって発電コストを引き下げ、民間企業が発電事業に参入し易くなる条件を整えなくてはなりません。
【阪南経済Now12月号】再生可能エネルギーと地域経済の活性化 | 阪南大学

2012年から、再生可能エネルギーで発電した電力を一定の期間、一定の価格で電力会社が買い取ることを義務付けた助成制度である固定価格買取制度(Feed in Tariff : FIT)が導入されています。

これに加えて、発送電分離を行うことで、送配電設備が公平に利用できるようになるため(後述)、さらに再生可能エネルギーを推し進められることになります。

例えば、自治体が主導する再生可能エネルギーの普及などが想定されています。

電力の完全自由化時代をどう迎えるか? ~全国自治体の動向~

電力自由化の目的

電力自由化は前述の通り、東日本大震災の原子力発電の事故とそれによる電力の供給不足を受けて、急速に推し進められることになりました。

より多くの民間企業が一般家庭に電力を供給できるようになり、さらに再生可能エネルギーが利用しやすくなれば、災害時の電力供給の安定につながると考えられています。

これが電力自由化の目的の1つと言えます。

電力自由化を進める目的のもう1つは、電気利用者の利便性の向上です。

様々な会社が電気の市場に参入することで、価格競争が起き、適切な電力料金になっていくことや、利用者それぞれの生活スタイルにあったプランなどが登場することが考えられます。

日本では2016年から電力小売全面自由化、2020年には発送電分離が始まり、これまで地域の電力を独占してきた電力業界にも市場競争の原理が導入されることとなる。

…(略)…

電力自由化とは従来自然独占されてきた電気事業において市場参入規制を緩和し、市場競争を導入することである。
現在私たちが使っている電力は、国が定める一般電気事業者(北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、九州電力、沖縄電力)が独占的に提供してきたが、ここに多数の新規事業者が参入し、私たちは自由に電力を供給する会社を選べるようになるということである。
海外の事例から見る電力自由化後の日本の電力会社のあり方

現在、日本の一般家庭向けの電力の販売は、地域ごとに決められた電力会社が行い、独占状況にある。この独占状態を打破するために、全ての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選択可能としたのが電力の小売全面自由化である。そうなると、各電力会社は競争せざるを得ないため、電力料金が下がると言われている。
電力自由化と固定価格買取制度の組み合わせ

他にも、このような流れの中で、投資などの経済活動が活発になることなどが考えられます。

この電力自由化をより促進するためには、既存の電力会社の発電部門と送配電部門を切り離すことで、競争的環境を整える必要があります。

それが発送電分離です。

発電事業と送配電事業をどちらとも行わなければならないというのは、新規事業者が電気事業に参入するにあたって厳しい条件となります。

さらに、送配電のための設備が独占されている状況では、それを使用するために、保有している電力会社に使用料などを支払う必要が出てくるという問題もあります。

そこで、送配電部分を現在の電力会社とは別とすることで、発電事業のみを行う新規事業者などでも公平に送配電設備を利用できるようになり、参入しやすくなることが期待できます。

電気事業においても公正な競争環境を整備するためには、送配電ネットワーク部分を中立的な共通インフラとして開放する必要があり、そのためには送配電部門の中立性を確保することが重要となります。
法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保 [関西電力]

具体的には、発電、送配電、小売がそれぞれライセンス制となり、どれか1つだけでも電気事業に参入できる、というように変わるとされています。

わが国では、2020年に向けて段階的な電力自由化(電力システム改革)が進められています。その結果、発電事業、送配電事業、電力小売事業がライセンス制となり、各事業への参入が可能となります。これに伴い、7.5兆円規模の電力市場が登場すると言われています(経済産業省)。
電力自由化を見据えた発電所運転と電力小売事業の付加価値創造のための技術評価

発送電分離による電力会社組織の変更

現在電力会社が持つ発電部門、送配電部門、小売部門の3つを1つの会社が行うことが規制されますので、1部門を1つの会社として分離することになります。

一般送配電事業者・送電事業者が、小売電気事業や発電事業を行うことが禁止されます(兼業規制による法的分離)。また、適正な競争関係を確保するため、一般送配電事業者・送電事業者と、そのグループの発電事業者や小売電気事業者に対し、取締役の兼職禁止等の行為規制も課されます。
発送電分離 - 電力システム改革 | 電気事業連合会

法的分離とは

冒頭で述べましたように、日本では法的分離による発送電分離が行われる予定となっています。

これは、次のようなものであるとされています。

日本では中立性を確保する方法として、送配電を行う会社を電力会社とは切り離し別会社とする「法的分離」に向け準備が進められています。これは両者の資本関係(持ち株会社も可能)は認めるものの、両者の間で厳格な情報遮断等を行うというものになります。
法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保 [関西電力]

つまり、分離した送配電会社を完全な別会社とはせず、子会社として持つことを認められるということになります。

その代わり、今までと同じような関係にならないように規制などが行われます。

送配電部門を完全に別会社とし、親会社・子会社などの資本関係も認めないものは所有権分離と呼ばれます。

ドイツなど、所有権分離による送配電分離を行なっている国もあります。

しかし、所有権分離の場合、元々電力会社の所有物である送電設備や部門を無理やり分離することになるため、財産権の侵害という問題が発生する可能性が高いと言えます。

現在、日本の発送電分離の改革案では、法的分離が予定されている。この改革は、戦後続いてきた垂直一貫の発送電の体制を見直すきわめて大きな転換であるが、諸外国の多くは一歩進んで所有権分離まで行っている。では、そもそも日本でこの所有権分離を行うことは、法的に可能であろうか。強制的な所有権の分離には、財産権の侵害という憲法上の問題がある。

…(略)…

民間事業者から、送電分離を行ったのは、ドイツである。ドイツでは、競争法違反の制裁金の回避等を理由に分離を行っている。日本の発送電分離においても、ドイツを参考に、所有権分離策を考えることになる。これらの事例は、所有権分離を強制的に行うのではなく、自主的な分離に誘導している。
電力システム改革における所有権分離への移行にかかる法的諸問題

海外の発送電分離

ヨーロッパ圏やアメリカの一部の州では、発送電分離が進んでいます。しかし、新規事業者の参入が活発ではなかったり、不祥事などでイメージが悪くなったりする事態も起きています。

国名 状況
フランス 2007年に電力は完全自由化されているが、電力の安定供給の観点から明確な発送電分離を導入しておらず、発電・送電ともに旧国営企業「EDF」がほぼ独占状態。
イタリア 2007年に電力は完全自由化されたものの、旧国営企業のシェアが8割。
ドイツ 家庭向け電力自由化市場は1998年に完全自由化され、1000社以上の電力会社があると言われる。しかし、新電力会社の失敗の事例がニュースなどで消費者に伝わり、新電力会社=危険なものというイメージがついている面がある。
イギリス 1990年に電力自由化・発送電分離が行われており、2014年時点で発電会社145社・小売会社127社が存在する。
アメリカ 2014年12月時点では、全米50州のうち13州およびワシントンDCでのみ小売全面自由化が実施中。全米で3200社以上の電気事業者が存在する。

海外の事例から見る電力自由化後の日本の電力会社のあり方

おしまい

以上のように、発送電分離が行われることにより、電力会社の一部門が別の会社として切り離され、送電設備が公共的に利用できるようになります。

発送電分離によって進む電力の自由化によって、消費者にとっては自分の生活スタイルにあった料金プランが選べるようになったり、価格競争により適正な価格での電気の購入ができるようになる可能性があります。

発送電分離が実際に実施されるまでにあと数年あります。この間で新しい情報が確認でき次第、追って更新していきたいと考えています。

参考

経済産業省 資源エネルギー庁 電力の小売全面自由化の概要

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