イーストフードの塩化アンモニウムは本当に危険と言えるのか

最終更新日時 : 2017年1月12日
イーストフードで膨らむ食パン

イーストフード」と Google で検索すると、上位にイーストフードは危険であるという旨のページが表示されます。(2016/12/26時点)

イーストフードは危険と書いているページが検索上位に

しかし、中身を読んでみると「塩化アンモニウムが危険と言われている」程度の漠然とした表現や、そもそもイーストフードではない臭素酸カリウムの危険性を前面に出しているような記事が多いです。

そこで、本当にイーストフードの塩化アンモニウムが危険なのか、何が根拠とされているのかを行政情報や研究機関が公開している情報から調べてみました。

イーストフードとは

塩化アンモニウムの話の前に、そもそもイーストフードとはどんなものなのかについて紹介します。

イーストフードの定義と目的

イーストフードは、パンの食感や膨らみをよくするため食品添加物です。イーストフードは単一の物質を指す言葉ではなく、様々な塩類(化学的な塩)を指します。

厚生労働省行政情報「食品衛生法に基づく添加物の表示等について」によると、厳密な定義は「パン、菓子等の製造工程で、イーストの栄養源等の目的で使用される添加物及びその製剤」とされます。

この食品添加物の目的は、パンを膨らませる発酵に必要な酵母であるイースト菌の活動を活発化することです。

イースト菌は、小麦粉中や生地に加えられた糖類をアルコールと有機酸(主に酢酸)と二酸化炭素に分解する働きをします。

このイースト菌が糖類を分解する際に発生した有機酸によってパンのタンパク質であるグルテンが伸びやすくなります。

イースト菌が活発になれば、グルテンがより柔軟性を増すというわけです。

イーストフードの種類

食品衛生法に基づく添加物の表示等について」によると、以下の16種類の物質がイーストフードとして表記されます。

  • 塩化アンモニウム
  • グルコン酸カリウム
  • 焼成カルシウム
  • 炭酸カリウム(無水)
  • 硫酸アンモニウム
  • 硫酸マグネシウム
  • リン酸水素二アンモニウム
  • リン酸一水素カルシウム
  • 塩化マグネシウム
  • グルコン酸ナトリウム
  • 炭酸アンモニウム
  • 炭酸カルシウム
  • 硫酸カルシウム
  • リン酸三カルシウム
  • リン酸二水素アンモニウム
  • リン酸二水素カルシウム

カルシウムやカリウム、アンモニアの塩類が主なイーストフードです。

豆腐を作る際の凝固剤としての使用が認められている添加物である塩化マグネシウムなどもイーストフードに含まれます。

今回は、この中の塩化アンモニウムについて注目したいと思います。

塩化アンモニウムの安全性

日本化学物質安全・情報センターである JETOC の文章を見てみると、塩化アンモニウムをマウスに投与した実験結果の報告があります。

SIDS in HPV programme & CCAP SIAM 17, 11/11/2003 初期評価プロファイル(SIAP) 塩化アンモニウム

このドキュメントによると、ラットにおける塩化アンモニウムの経口LD50(口から摂取させた時に半数が死に至る量)は、雄が体重1kgあたり 1630mg、雌が体重1kgあたり 1220mg であるとされています。

また、体重1kgあたり 684mg の塩化アンモニウムを70日間投与した実験では異常は見られていません。

その上、遺伝毒性や母性毒性、催奇形性がないことが確認されています。

体重60kgの人間に無理やり換算するとすれば、一気に 7g 程度の塩化アンモニウムを取れば危険と言えます。現実的に考えると 7g の塩化アンモニウムを一度に取ることは考えられません。

つまり、この結果からは、食品添加物に含まれているような微量を長期間撮り続けたとしても問題にはならないと言えます。

FAO/WHO合同食品添加物専門家会議JECFA)による評価では、塩化アンモニウムに対してのADIAcceptable Daily Intake : 一日摂取許容量)の指定がありません。

指定添加物(規則別表一)のJECFAによる安全性評価

ADIを制限しないということは、以下のような意味があります。

ADI を特定しない (Not specified)又は制限しない (Not limited)

摂取量の上限値を数値で明確に定めないADI は、極めて毒性の低い物質に限られるもので、食品中に常在する成分、又は食品とみなし得るもの若しくはヒトの通常の代謝物とみなし得るものに設定される。入手(化学的な、生物学的及び毒性学上の)データにより、目的とする効果を得るために必要な量でのその物質の使用、及び食品中に存在するものからもたらされる当該物質の毎日の摂取が、健康に危害をもたらさないことが示されている。この理由及び個々の評価で示した理由に基づき、mg/kg/日でADI を設定する必要がないと考えられる。
食品添加物の FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)による 安全性評価

したがって、ADIを設定する必要がないほど毒性が低いとみなされていることを意味します。

また、京都女子大学の現代社会学部名誉教授である小波秀雄氏は以下のように述べています。

塩化アンモニウムは毒性が強く,イヌに6~8g投与すると1時間以内に死んでしまう。人間が大量に摂取すると,吐き気や嘔吐,さらには昏睡を起こすことがある。熱で容易に分解されるが,有毒なアンモニアと塩化水素が発生する。(渡辺「“パンの王様”がつくる添加物の塊—ヤマザキクリームパン」,P6–7)

塩化アンモニウムは急性の毒性を持っている。ただし動物は体内の代謝の老廃物であるアンモニアやその類縁物質を捨てて生きているのであるから,塩化アンモニウムの毒性も少量なら耐えられる性質のものであり,まして慢性の毒性を持つものではない。「大量に摂取すると」という仮定を置いて議論するのは,少量の塩化アンモニウムしか含んでいないものの有害性をわざと過大に見せるための非現実的な話しである。

また,塩化アンモニウムが熱で容易に分解されるというが,体内のどこにその分解を引き起こすような高い温度の部位があるというのか。アンモニアと塩化水素は常温ではきわめて容易に反応して塩化アンモニウムになってしまうものであり,上の議論はありもしないことを書いて脅しているだけのことである。

化学音痴が化学を論じる危険

犬に6~8gという投与量は、先ほど人間の例で述べたように現実的な数値ではありません。

以上のことから、イーストフードに含まれる塩化アンモニウムが危険であるとは言えないと考えられます。

臭素酸カリウムとは

よくイーストフードと同列に危険であると書かれる添加物に臭素酸カリウムがあります。

こちらは実際にラットでの実験で発がん性が確認されています。

1992年、第39回JECFAでは、新たな毒性学的データが評価され、経口投与による長期毒性・発がん性試験では、ラットにおいては腎細胞腫瘍、腹膜中皮腫、甲状腺ろ胞細胞腫瘍が発現し、ハムスターにおいては腎細胞腫瘍の発現率のわずかな増加が認められたとされています。これらの知見及び in vivo 並びに in vitro での変異原性試験結果に基づき、臭素酸カリウムは「遺伝毒性発がん性物質」であるとの結論となりました。また、小麦粉への60 mg/kg以下の使用であっても微量の残留が見られることが明らかになったため、臭素酸カリウムの小麦粉処理剤としての使用は適当ではないとされ、小麦粉処理剤としての使用の許容量は削除されました4)。

さらに、1995年、第44回JECFAでは、新たな毒性データはないものの、当時新たに開発された分析法により、臭素酸カリウムで処理された小麦粉で製造したパン中に残留臭素酸が検出されたとの報告がなされ、再度、小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの使用は適当でないと結論されました5)。
食品安全委員会 臭素酸カリウム

小麦1kgに対して60mg、つまり100gに対して6gほどの臭素酸カリウムを加えると、パンにそれが残るとされます。

現在市販されているものは、出来上がり時点で臭素酸が残るものはほぼないと考えられます。

2002 年の同部会では、厚生科学研究で行われた高度分析法の開発及びパン中の臭素酸残留実態調査から、検出限界 1 ppb、定量限界 2 ppb にまで感度が向上したこと、市販パン等 135 検体で臭素酸の残留は確認できず、輸入冷凍パン生地等で臭素酸が一部微量に検出されたが、パン焼成時には完全に分解されると考えられ安全性上問題となるような結果は得られなかったと報告されました 8)。以上を踏まえ、高感度に改良した新たな分析法によって監視等を行うことにより安全性を確保する上で支障はないと結論されました。
食品安全委員会 臭素酸カリウム

基準としては、口にする時点で臭素酸が検出されなければ問題ないとされています。

1ppb(10億分の1)の精度で微量検出されているものがありますが、これが体に悪影響を及ぼすかははっきりしたことは言えません。

公的に問題ないとされている以上、これを危険と見るか問題ないと考えるかは消費者自身が決めることになります。

心配であれば避けるというのも一つの方法だと思います。

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