昼寝の健康効果と食後すぐ寝ることによる健康への影響

最終更新日時 : 2017年1月17日
昼寝の健康効果

食後にすぐ横になるのは健康に良くないという話を聞きます。

最近お昼に眠くなることが多かったので、昼寝の健康効果と、食後すぐ寝ることによる健康への影響について調べてみました。

昼寝の健康効果

昼寝には以下のような効果が確認されています。

記憶力の増強

30分以内の短い昼寝をする習慣のある人は、記憶力が高いことが研究の結果わかっています。

In one study, participants who napped regularly for 10-, 20-, and 30-minute periods improved their performance on cognitive tests of memory and vigilance conducted in the subsequent two and a half hours.
7 surprising benefits of an afternoon nap : TreeHugger

[日本語訳]
ある研究では、10分、20分、あるいは30分ほど昼寝を習慣的にする被験者は、2時間半の認知テストにおける記憶や警戒の能力が高まったことが確認された。

さらに、6分ほどのかなり短時間の昼寝でも、全く寝なかった場合に比べて高い暗記力増強効果があるようです。

In the first experiment we assessed free recall of a list of 30 words after a 60 min retention interval that was either filled with daytime napping or waking activity.

…(略)…

included an additional third group, which was allowed to nap for no longer than 6 min on average. In comparing word recall after conditions of no napping (waking), short napping, and long napping, we found superior recall for both nap conditions in contrast to waking as well as for long naps in contrast to short naps. These results demonstrate that even an ultra short period of sleep is sufficient to enhance memory processing.
An ultra short episode of sleep is sufficient to promote declarative memory performance – LAHL – 2008 – Journal of Sleep Research – Wiley Online Library

[日本語訳]
30個の単語を覚えて、60分後に言えるかどうかのテストを
全く寝ない(歩く)グループ、短時間の昼寝をするグループ、長時間の昼寝をするグループに分けて行った。
すると、昼寝をした2つのグループは、歩いたグループに比べてかなり良い成績であった。
この結果は、たとえ超短時間でも記憶定着力を上げるのに十分な効果があることを示している。

心疾患の予防

ヨーロッパには「シエスタ」と呼ばれる昼寝の習慣があります。

研究の結果、この昼寝に血圧低下や心臓の病気の予防効果がみられたそうです。

The siesta habit is associated with a 37% reduction in coronary mortality, possibly because of reduced cardiovascular stress associated with daytime sleep.
ARTICLES | Journal of Applied Physiology

[日本語訳]
シエスタの習慣は心臓病死亡率を37%低下させるが、これは昼寝によって心臓血管系のストレスが和らぐことに関係する可能性が高いと考えられる。

昼寝をする時間について

昼寝は短時間の方が、体のだるさもなく夜の睡眠にも影響を与えにくいようです。

昼寝をしても深い睡眠=ノンレム睡眠(段階3、4)に移行する前に起きれば、夜の睡眠に悪影響を及ぼすことはなく、さらに昼前の眠気が解消されることで作業効率が上がることが分かっています。
効果的な昼寝のポイント | 睡眠のイロハ | Fuminners

Most experts recommend a nap of 10 to 20 minutes, any longer can lead to “sleep inertia”
7 surprising benefits of an afternoon nap : TreeHugger

[日本語訳]
多くの専門家たちは10〜20分の昼寝を勧めている。それ以上長く眠ると「睡眠惰性」を引き起こす。

sleep inertia(睡眠惰性)とは、いわゆる寝ぼけた状態のことです。体に怠さがあり、何かに素早く反応する能力が落ちています。

昼寝の後すぐに作業をしたい場合は、短時間睡眠にしておくのがいいかもしれないですね。

昼寝の向き・不向き

昼寝をすると必ず深い眠りに落ちてしまう人と、昼寝をしても浅い眠りで済み、活力的に起きられる人の2つのタイプがあるそうです。

昼寝に向いていないと思うのであれば、無理に寝る必要はないかもしれません。

高齢者の昼寝の影響

高齢者の昼寝に関してですが、寝すぎると認知症を高めるという研究結果があります。

ただ、60歳以上の場合のデータしか見当たらないため、中年層の場合はどうかはわかりません

Naps might increase dementia risk: study – Taipei Times

Napping in older people 'at risk' of dementia: relationships with depression, cognition, medical burden and sleep quality. – PubMed – NCBI

逆に、短時間の昼寝を習慣づけると良い効果があるみたいです。

30分間以内の昼寝を習慣的にとっている高齢者は、昼寝をしていない人と比べ、アルツハイマー型認知症にかかる危険率が6分の1にまで減るという研究結果もされています。
効果的な昼寝のポイント | 睡眠のイロハ | Fuminners

食後すぐ寝ることによる健康への影響

昼寝をしようと思った時に心配になるのが、食後直ぐに眠ってしまった場合に悪影響があるのかということです。

食べた後寝るのはよくないとか、実はよいとか様々なことが言われていて、常々疑問だったので調べてみました。

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消化の観点からはOK

食事の後は、食べ物を消化してエネルギーを吸収するために、消化器官周りに血液が集中します。

したがって、安静にしているほうが身体中に血液が分散しにくいため、消化が促進されると言えます。

食後むやみに身体を動かすと、血液が筋肉のほうに回ってしまい、胃腸への血のめぐりが悪くなってしまいます。これでは食べ物を十分に消化できません。
つまり、食べ物をちゃんと消化するためには、食後はゴロンと横になって胃腸のはたらきを助けるのがいいということ。
「食べてすぐ横になると牛になる」の医学的真相が判明! – エキサイトニュース(1/3)

横になる際、体の右側を下にすると消化が促進されます。これは、胃の出口が体の右側にあるためです。

場合によっては逆流の危険あり

普通であれば、食道と胃の間は下部食道括約筋と呼ばれる筋肉で遮断されているので、胃から食道へものが逆流することはありません。

しかし、この筋肉が何かしらの理由で弱くなってしまい、寝ている間に胃から食道へ胃酸が流れやすくなってしまう場合があります。

筋力が低下する高齢者に起こりやすい症状ですが、若い方でも起こることがあります。

その主な原因は以下のようなものです。

原因1 便秘

便秘の状態では、腸から受ける圧迫によって逆流が起こりやするなるようです。

お腹が張っている時、胃は腸からの圧迫を受け、食道への逆流が起こりやすい状況になるのです。常習性便秘症の人の約10%に逆流性食道炎が見られ、慢性的な便秘によって常にお腹が張った状態になると、若い人でも逆流性食道炎が起こりやすいことがわかっています。
若い人にも増えている逆流性食道炎 | カラダの豆事典 | サワイ健康推進課

原因2 脂肪分の多い食事

脂肪は、他の栄養素よりも消化の負担が大きいです。

胃酸がたくさん分泌され、コレシストキニンCCK)と呼ばれる消化管ホルモンも分泌されます。

コレシストキニンは小腸の上部から分泌され、食後の消化液(胃酸、膵液、胆汁など)の分泌を制御する消化管ホルモンと言われています。

また、コレシストキニンは脳にも作用し、満腹感を感じさせるなどの働きによって食欲に影響を与えます。

コレシストキニン(CCK)は末梢(腸管)や中枢(後視床下部など)において、満腹感を司る神経情報伝達を担うペプチドとして古くから知られている。マウスやラットにおいて、CCK-A受容体アゴニスト(CCK-8s)投与が、摂食活動を抑制することから、CCK-A受容体が満腹感を司る神経情報伝達に重要であることが示唆されている。
富山大学 理学部・大学院理工学教育部理学領域 摂食調節ペプチドの意外な生体機能調節(生物学科)

このコレシストキニンには、下部食道括約筋を緩めてしまう効果があるそうです。

脂肪の多い食事をとった時に十二指腸から分泌されるコレシストキニンというホルモンの働きや、たくさんの食事で胃が引き伸ばされることで、下部食道括約筋がゆるむと考えられています。
逆流性食道炎 病気の基礎知識|アステラス製薬|なるほど病気ガイド

原因3 カフェインやアルコール

アルコールには胃酸増加&下部食道括約筋を緩める効果が、カフェインには胃酸増加の効果があるようです。

アルコールは、胃酸の分泌を増やすと同時に、食道下部括約筋をゆるめることが分かっています。アルコールはできるだけ控えましょう。

またコーヒーや緑茶などに含まれるカフェインも、胃酸の分泌を増やします。
逆流性食道炎 病気の基礎知識|アステラス製薬|なるほど病気ガイド

胃酸が逆流すると逆流性食道炎に

胃から食道へ胃酸が流れると、食道が炎症を起こします。この症状は逆流性食道炎と呼ばれています。

胃には酸から粘膜を守る防御機能が働いています。
しかし食道にはこの防御機能がないため、何らかの原因で胃酸が食道に逆流すると、食道粘膜は強い酸である胃酸にさらされて炎症を起こします。
逆流性食道炎ってどんな病気?原因は?影響は?|胸やけ・呑酸.jp

胃酸だけではなく、消化途中の食べ物が食道に残ってしまうと大変です。

それ自体が強い酸性をもっているので、食道を侵食し続けます。

逆流性食道炎は、強い酸性の胃液や、胃で消化される途中の食物が食道に逆流して、そこにとどまるために、食道が炎症を起こし、胸やけや胸の痛みなどさまざまな症状が生じる病気です。
逆流性食道炎|アステラス製薬|なるほど病気ガイド

食後すぐ横になるのは逆流の危険あり?

アステラス製薬のHPには以下のように記載されています。

食後3時間くらいは、胃の内容物の逆流が起こりやすいといわれています。食後すぐに横になったり、寝る前に食事をとることは避けましょう。
逆流性食道炎 病気の基礎知識|アステラス製薬|なるほど病気ガイド

先ほど「消化を促進するためには、体の右を下にして横になると良い」と書きました。

しかし、逆流しにくさを優先するのであれば、体の左側を下にするのがいいようです。

右側を下にして寝ると、食道が下を向くため逆流しやすくなるのです。一方、左側を下にすると、食道は上にあるため、たとえ食べた物が上にたまっていても逆流しにくいのです。
胸やけ! 長引く新理由 – NHK ガッテン!

逆流性食道炎に効くもの

逆流性食道炎にはオリーブオイルが効果的だそうです。

オリーブオイルは下部食道括約筋をほとんどゆるめないという結果が出ています。これは、オリーブオイルが消化に負担をかけないためと考えられます。
若い人にも増えている逆流性食道炎 | カラダの豆事典 | サワイ健康推進課

以上のことから…

もし横になったとき、胸焼けのような違和感を感じる場合は横になるのを避けるか、上半身の位置を高くして左を向いて横になるといいでしょう。

脂肪分の多いものをたくさん食べた後に横になることは、避けたほうがよさそうですね。

食後に眠くなるのは自然なこと

冒頭で書いた通り、食後は消化活動のために、血液が消化器官に流れます。

これによって脳の血流は少なくなります。

つまり、脳に行く酸素の量が減少しているため眠気が襲ってくるのです。

食後は、食べ物を消化するために胃腸周辺に血液が集中します。満腹になると眠くなるのも、頭に血があまり行かなくなるためです。
「食べてすぐ横になると牛になる」の医学的真相が判明! – エキサイトニュース(1/3)

夕食後に眠るのは肥満の原因となる

夜はエネルギーを消費せずに蓄える時間帯となりますので、食事の栄養分がそのまま体に蓄積されます。

食べてすぐ横になって身体を休めるのはいいのですが、夜遅くに食事して、そのあとすぐに寝るというのはよくありません。深夜の食事の直後に眠るのは肥満のもとです。
「食べてすぐ横になると牛になる」の医学的真相が判明! – エキサイトニュース(1/3)

おしまい

お昼に眠くなるのには何か理由があってのことだと思います。夜の睡眠不足、睡眠の病気、食べた後の血流の関係…など。

特に重大な病気でなく、ただの眠気であれば、短時間昼寝をして疲れを取るのも後々の作業効率を上げるためには良いかもしれません。

食後は横になること自体は問題なさそうですが、昼寝の間に逆流が起きると怖いですね。

食後は消化がスムーズに行われるように、激しい運動を避けてのんびり過ごすのが良いと言えます。


あの医学都市伝説ってホントなの?

健康常識100のウソ 間違いだらけの「家庭の医学」

参考

コレシストキニン受容体による脳腸機 – 新潟大学脳研究所

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