ガムの成分と噛むことによる健康効果

最終更新日時 : 2016年11月20日
キシリトールガム

ガムを噛むことは歯や顎の健康維持に役立つことが広く知られています。

さらに近年、各機関の研究により、ガムを噛むことは脳の活性化肥満防止にも効果があるという事実がわかってきています。

しかし、どういう原理でそのような効果が得られるのかを知らなければ、納得できないと言う方は多いと思います。

今回は、ガムを噛むことによって得られる効果をまとめてみたいと思います。

ガムの成分による健康効果

ガムに含まれる成分によって、歯や歯茎に影響を与えることがわかっています。

ガムに歯周炎を抑える成分を配合して、その予防効果を調べる研究では、実際に配合した成分による予防効果が得られる結論付けられています。

植物タンニン配合シュガーレスガムが歯周健康へ与える影響 新潟大学 平成20年3月24日

つまり、ガムに含まれる成分そのものが直接口内に影響を与えると言うことです。

ガムに歯に良い成分が含まれていれば、歯に良い影響が与えられます。

キシリトールガムによる虫歯予防

キシリトールは自然界に存在する天然の甘味料です。例えばイチゴに多く含まれています。

キシリトールの甘さは砂糖と同等と言われています。カロリーは砂糖の4分の3です。

砂糖と違う点は、虫歯菌がそれを元に酸を作ることができないため虫歯の原因にならないということです。

逆にキシリトールには虫歯菌を減少させる効果があるため、むしろ歯にやさしい甘味料と言えます。

砂糖を摂取した時、口腔内のpHレベルは急速に低下し、歯のエナメル質の脱灰が 生じます。キシリトールは口腔内細菌によって全く発酵されませんので酸は生成せず、
pH値も変化しません。

キシリトールは歯垢とその中の虫歯菌を減少させることがユリビエスカのキシリトールガムでの研究などで実証されています。このような効果が実証されている甘味料
はキシリトールだけです。
日本歯科大学 – キシリトールとは

シュガーレスガム

もしガムに虫歯予防の効果を期待するのであれば、そのガムは絶対にシュガーレスでなければいけません。

せっかくキシリトールが配合されていても、虫歯菌の養分になる砂糖が含まれてしまっていてはキシリトールの効果はほとんど無いと言えます。

チューイングガムなどは、長時間口の中に糖分が溜まることとなるため、逆に虫歯を促進します。

しかし、チューイングガムでも次に紹介する「噛むことによる健康効果」は期待できます。

ガムを噛むことによる健康効果

咀嚼の効果

ガムを噛むことには、咀嚼(そしゃく)の能力を鍛える効果があります。

咀嚼とは、食べ物を歯で噛んで砕くことです。

咀嚼の役割としては、食物の嚥下(えんげ:飲み込むこと)・消化を助けるだけでなく、口腔の自浄作用、あごの発育や脳の発達、肥満防止、精神状態の安定、老化防止などの作用があります。
最近の咀嚼能力評価法について 健康開発学科 口腔保健科学専攻

「口の中が綺麗になり、あごが発達する」というのはなんとなくわかる気がしますが、なぜものを噛むだけで脳の発達や精神の安定などが起こるのでしょうか。

その理由について、各項目ごとに以下にまとめます。

脳の発達

マウスを利用した研究では、噛む必要のない柔らかい食べ物ばかりを食べたマウスは、脳の機能が衰えたという結果が得られています。

さらに、人間を対象にした実験では、噛むことによって短期記憶能力が良くなることがわかっています。

咀嚼機能と脳の関係について,マウスにおける長期間の軟食摂取によって学習能力の低下が認められ,老化予防や持久力の増加などに影響することがわかっている。
ヒトを対象とした研究では,fMRI(functional magnetic resonance imaging: 機能的磁気共鳴画像解析)を用いてガム咀嚼時の脳の神経細胞の活動状態が調べられており,覚醒度の改善とワーキングメモリ機能の活性化がみられている。また,咀嚼運動を伴う摂食行為が短期記憶能力の向上を誘発することが明らかとなっている。
ガム咀嚼が作業効率と疲労に与える影響に関する研究 日本健康医学会雑誌

ガムを噛んだ後の音に対する反応速度を測定する実験では、ガムを噛んだグループの成績が良くなったという結果が得られています。

私達は、健常被験者に5分間、無味・無臭のチューインガムを噛んでいただき、その直後に音刺激を用いてP300を測定しました。このタスクを3回繰り返し、タスクとタスクの間にも同様のガム噛みを行いました。またボタン押しによる反応時間も同時に計測しました。比較のために、
(1) 何もしない、
(2) 噛むのと同じような顎の運動はするが、実際には噛まない、
(3) 手指の運動(タッピング)を行う、という条件でも同様の実験をしました。
すると、噛む時には、反応時間とP300反応の潜時(出現までの時間)が有意に短縮し、この運動を繰り返せば繰り返すほどその効果は顕著でした。しかし、何もしない時には変化は見られず、顎や指の運動ではむしろ反応が遅くなりP300の潜時は延長、しかも繰り返せば繰返すほど、その傾向は強くなりました。  

この結果は、良く噛むこと(咀嚼)は脳を活性化することを明確に示し、それは類似の顎の運動や、単なる指の運動では出現せず、良く噛むこと(咀嚼)が特別に大切である事を示しています。メジャーリーガーがガムを噛んでいることは効果的であり、脳を活性化させる意味があることを世界で初めて明らかにしました。
噛めば噛むほど、脳は活発に — モノを噛むことに効果あり。脳波を使った研究で証明 —

精神安定

噛むという行為は、見方を変えれば繰り返しの運動です。

この繰り返し行われる運動は、セロトニンという脳内伝達物質を分泌させる効果があることがわかっています。

運動による気分の改善については以下の記事をごらんください。

運動によって気分を良くできる理由 – 筋肉や脳内で分泌される物質

文献「ガム咀嚼が作業効率と疲労に与える影響に関する研究」によれば、ガムやグミを食べることで、大脳へのリラックス効果やストレス軽減効果が得られると報告されています。

さらに、ガムを20分以上噛むことで、実際にセロトニン神経系が活性化され鎮痛効果が現われたと書かれています。

ちょっと20分ガムを噛み続けるのは大変かもしれませんが、実際にセロトニンによる効果が得られるようです。

肥満防止

ガムを噛む運動によりカロリーを消費することは言うまでもありませんが、ガムによる肥満防止はそれだけの効果ではありません。

東京工業大学で行われた、食べる速さと、食事後にガムを食べることによる消費エネルギーの変化を調べた実験があります。

被験者12名に安静時の測定後、パスタ、ヨーグルト、オレンジジュース(合計621kcal)を与えた。
食品をできるだけはやく食べる試行とできるだけよく噛んで食べる試行とを行った。加えて、食事終了後に15分間ガムを噛む試行と噛まない試行とを行った。
安静時から摂食、摂食後3時間までのエネルギー消費量(酸素摂取量)を計測し、食事誘発性体熱産生量を算出した。
噛めば噛むほどエネルギー消費―実際の食事と食後のガム咀嚼でエネルギー消費の増加を実証―

この結果、よく噛んで食べた時の方が消費カロリーが30kcalほど増えたということです。

これは体重40kgの女性がラジオ体操を行なった時の消費カロリーに匹敵します。

運動の体重別消費カロリー表

また、食後にガムを15分間噛むグループは、ガムを噛んでいる間だけでなく、ガムを噛んで40分程度は消費量が常に6~8kcal増加するという結果が報告されています。

この事実は、噛むと言う行為そのものがカロリー消費量を増加させることを意味しています。

唾液の増加

噛むことで唾液の分泌量が増えます。唾液はデンプンを消化するほかに、歯の強化(再石灰化)の効果もあります。

虫歯にならないための歯の知識

つまり、たくさん噛むことで消化も良くなり、虫歯予防にもなります。キシリトールガムを噛めば、キシリトールと唾液の両方の効果を得ることができます。

食べ物を口の中で十分に小さくなるまで噛むことができれば、唾液による口の中での消化の効率が良くなり、また、子どもや高齢者の場合は、食べ物を小さくすることで喉にものを詰まらせる危険性がなくなります。

咀嚼能力チェック

噛む回数によって色が変わるガムが市販されており、これによって噛む能力のチェックが簡単にできます。

噛む回数で色が変わるキシリトールガム

キシリトール咀嚼力判定ガム 50枚入

このガムを利用して、以下のようにチェックが行われます。

ガム一粒を、通常、ガムを噛む様に 2 分間噛んだ後、白い紙等の上にガムを置き、パッケージに記載されているカラーチャートを用い緑から赤までの色の比較で判定します。

ガムを用いた測定の特徴として、判定に特別な器機を必要とせず、判定時間も迅速におこなわれ、自分自身で肉眼的に判定することが可能であることがあげられます。そのような特徴から、学校や職場などの、地域歯科保健の場での応用がすすめられています。
最近の咀嚼能力評価法について 健康開発学科 口腔保健科学専攻

おしまい

以上、ガムの成分やガムを噛むことによる健康効果でした。

噛むことによって体全体に良い影響が出ると言うことがわかりつつあります。たかが口の運動とバカにせず、よくものを噛むことが大事と言うことですね。

やはり長時間ものを噛むにはガムが最も向いている食品です。定期的にガムを噛むと良い影響が出てくるかもしれません。

キシリトールを100%使用したガムであれば、虫歯を予防しながら脳の活性化ができます。


【歯科専用】キシリトールガム ボトルタイプ90粒(アップルミント)

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