飲み水といえば、何を思い浮かべるでしょうか。
日本国内は水道水が比較的安全に飲み水や調理水として使えますし、様々なミネラルウォーター類も市販されています。
今回はミネラルウォーターの種類や性質、水道水との違い、軟水と硬水の違いなどについて紹介します。
ミネラルウォーター類の種類
実は、ミネラルウォーターには厳密な分類基準があります。その分類は、農林水産省が定める以下のガイドラインに記載されています。
ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン(改正 平成7年2月17日 食品流通局長通達7 食流第398 号)
このガイドラインによれば、ミネラルウォーターの種類は大きく分けて以下の4つです。
ナチュラルウォーター
安定な地下水の供給がある水源から取られた水で、沈殿・濾過・加熱殺菌以外の処理を行わないものをナチュラルウォーターと呼びます。
最も純粋に近い水ですが、基本的に水は湧き出るまでに鉱物を吸収するため、ナチュラルウォーターという名称で売られるということはまずありません。
どんなに天然に近づけても次のナチュラルミネラルウォーターになります。
ナチュラルミネラルウォーター
ナチュラルウォーターのうち、地下のミネラル分を吸収したもののことをナチュラルミネラルウォーターと呼びます。天然の状態で、特に添加物なども加えられていないものです。
市販されているミネラルウォーターの多くは、湧き出るまでの過程で山の地層などに含まれるミネラルを吸収していますので、このナチュラルミネラルウォーターとなります。
厳密な定義は異なりますが、一般に「ミネラルウォーター」と言えば、このナチュラルミネラルウォーターを指している場合が多いです。
手元にあった「富士山天然水」のラベルに書かれた名称を見てみると、ナチュラルミネラルウォーターと記載されていました。
コカ・コーラの「いろはす」(無味のもの)やサントリーの「サントリー南アルプスの天然水」なども、このナチュラルミネラルウォーターです。
ミネラルウォーターはどれも同じではありません。サントリー天然水はナチュラルミネラルウォーター。ミネラル分を人工的に添加したり、成分を加工したりしていない、自然本来のおいしさを生かした安全な水です。
サントリー天然水 | サントリー天然水 サントリー
アメリカ産の「クリスタルガイザー」も有名なナチュラルミネラルウォーターです。(名称は後述する「その他」のものになっています。)
また、湧き出る過程で二酸化炭素を吸収して天然に発泡性を得る水がありますが、これもナチュラルミネラルウォーターに分類されます。
ミネラルウォーター
ナチュラルミネラルウォーターに後からミネラル分を加えたりといった調整を行ったものは、ナチュラル(自然)ではないためミネラルウォーターという名称に変わります。
上記ガイドラインには以下のように記載されています。
ナチュラルミネラルウォーターを原水とし、品質を安定させる目的等のためにミネラルの調整、ばっ気、複数の水源から採水したナチュラルミネラルウォーターの混合等が行われているものにあっては、「ミネラルウォーター」と記載すること。
キリンの「アルカリイオンの水」は、電気分解を行なってアルカリイオン化(pH8.8~9.4に調整)を行なっているためミネラルウォーターに分類されます。
飲料水・ボトルドウォーター
上記のいずれにもあてはまらない水を飲料水またはボトルドウォーターと表記します。
上記ガイドラインによれば、ナチュラルウォーターとナチュラルミネラルウォーター以外の商品の名前に「自然」や「天然」という言葉を使うのは禁止されています。
(この記事では、上記4つをまとめてミネラルウォーター類と記載します)
その他
海外製のミネラルウォーターの場合、上記4つの分類に当てはまらない商品名のものがあります。
例えば、クリスタルガイザーは日本の分類ではナチュラルミネラルウォーターですが、そのラベルの名称を見ると「スプリングミネラルウォーター」と記載されています。
水の硬度
水の硬度とは、ミネラルウォーター類も含め、それに含まれるカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)の量によって表される指標です。
具体的には、以下の式で水の硬度が計算されます。
水の硬度 = Ca濃度(mg/L) × 2.5 + Mg濃度(mg/L) × 4.1
カルシウムよりもマグネシウムの方が水の硬度に影響します。この硬度の値によって、水は3種類に分けられます。
硬度とは、水に含まれるカルシウム濃度およびマグネシウム濃度で表される指標で、算出基準は国により異なります。日本では米国の基準が広く採用されており、「カルシウム濃度(ミリグラム/リットル)×2.5+マグネシウム濃度(ミリグラム/リットル)×4.1」で算出されます。硬度を分類する基準にはいろいろありますが、硬度100以下が「軟水」、101~300は「中硬水」、300以上が「硬水」というのがおおよその目安になります。
水と地域「軟水、硬水、炭酸水」 水大事典 サントリーのエコ活 サントリー
世界保健機関(World Health Organization: WHO)の定義では、硬度120mg/L以下の水を軟水としています。
軟水の特徴
ミネラル分が少ないため、飲みやすく料理での利用にも適しています。
市販されているナチュラルミネラルウォーターは、硬度50mg/L前後の軟水が多いです。
(「富士山天然水」はミスなのかわかりませんが単位がml/Lになっています)
また、日本国内の水道から出る水はほぼ軟水です。沖縄の水は硬水に近いそうです。
硬水の特徴
硬水はミネラル分が豊富に含まれていますが、料理に利用する場合はミネラルの作用でたんぱく質が固まって旨み成分が溶け出さない場合があるそうです。(上記サントリーのページより)
ミネラルが多いとはいえ、1日の摂取量を補うには足りないため、食事はしっかりとる必要があります。
ヨーロッパなどは硬水が多いみたいです。
また、硬水では石鹸が泡立ちにくくなります。硬水に含まれるミネラルのイオン(Ca2+やMg2+)が石鹸の成分と結合し、水に溶けない物質(塩)を作ってしまうためです。
合成石鹸は、この欠点を補うために開発されたものもあります。
軟水か硬水か見分けるには石鹸を泡立ててみるとわかります。
ミネラルウォーターの水源
ミネラルウォーターのラベルの原材料の項目を見てみると、括弧書きで(深井戸水)などと書かれています。
これは、そのミネラルウォーターの水をどこから取ったかを表すもので、ミネラルウォーターを販売するにあたって記載するのが義務となっています。
その分類の詳細は、ガイドラインによれば以下のようになっています。
浅井戸水
深井戸水
湧水
鉱泉水
温泉水
伏流水
鉱水
水道水は飲料水として安全か?
塩素
水道水に含まれる成分としては、消毒用の塩素が有名です。
塩素は水道水に含まれる有害なアンモニウムイオンを除去するために使用されます。
この塩素は人体に影響が出ない基準量を守っているため問題はないと言われています。
世界保健機構(WHO)の塩素濃度ガイドラインでは、体重60kgの人が1日に2リットルを、生涯に渡って毎日飲み続けても健康に影響が生じない濃度を、「5mg/L」以下としています。(mg/L:1リットルの中に何mg含まれているかを示す単位)
千葉県水道局の水道水(蛇口)での平均濃度は、0.6mg/L(平成25年度の平均値)ですので、毎日飲み続けていただいても健康に影響はありません。
その2「水道水」には塩素が入っているけど毎日飲んで大丈夫?/千葉県
健康への影響はありませんが、塩素は水の風味に影響するようです。
水道水の味を悪くする原因は、アンモニウムイオンと塩素が結合することによって発生する物質や、塩素そのものが残っていることなどのようです。
水源が家庭排水や工業,農業排水等によって汚染されると,流入する窒素化合物から分解して生じたアンモニウムイオンが充分酸化されずに浄水場の原水に含まれることとなる.浄水場では消毒用に塩素を用いるが,アンモニウムイオンはこの塩素を大量に消費して結合塩素になったり,窒素ガスなどに酸化されたりする.
したがって,原水にアンモニウムイオンが多く含まれる汚染された水を処理するために塩素を投入する量が多くなり,その塩素臭が味を悪くする.
また,塩素と窒素が化合した三塩化窒素も塩素臭の原因である.
ナチュラルウォーターならびにナチュラルミネラルウォーターは,沈殿,ろ過,加熱殺菌のみの加工が許されているだけで,塩素の注入は認められない.したがって,塩素臭は無くおいしい水が保障される.
富山県立大学 ミネラル
トリハロメタン
トリハロメタンも水道水の殺菌のために用いられる物質です。
トリハロメタンは一つの物質の名前ではなく、クロロホルムやブロモジクロロメタンなど計4種類の物質の総称です。
浄水場の塩素殺菌で生成するトリハロメタンには塩素と臭素で置換されたクロロホルム(CHCl3),ブロモジクロロメタン(CHBrCl2),ジブロモクロロメタン(CHBr2Cl),ブロモホルム(CHBr3)の4種類が知られており,水道水中のこれらの濃度の合計値を総トリハロメタンとしている。
横浜国立大学 水道水中のヨウ素系トリハロメタンの測定
同資料によると、トリハロメタンは地域によって含まれる量が異なるようです。
この物質は発がん性があることが指摘されています。
1974年に米国ニューオリンズではミシシッピー川から取水した水道水を飲用している住民の発がん率が、地下水を飲用している住民と比較して高いことが分りました。動物ではトリハロメタンの1種クロロホルムに発がん性が認められていたので、トリハロメタンの関連が疑われました。
その後、動物実験で多種類の消毒副生成物に発がん性、変性及び肝臓や腎臓への毒性等が確認されました。現在、クロロホルムやブロモジクロロメタン等のトリハロメタンは国際がん研究機関で人間との発がん性の可能性が指摘されています。
埼玉県立大学 WEB講座 水道水中の消毒副生成物
東京都水道局の公式ページによると、健康に影響が出ないレベルに抑えているため安全であるとのことです。
質問;水道水には、トリハロメタンが入っていると聞いたのですが心配ないですか。 回答; 川などの水には、植物が枯死し、分解したときにできる腐植質や都市排水などの中にある有機物質が含まれています。水道水をつくる過程で塩素処理を行うと、これらの物質と塩素が反応してトリハロメタンができます。東京都の水道水中に含まれるすべてのトリハロメタンの量は、水質基準値以下であり安全性に問題はありません。なお、水質基準は、生涯にわたり連続して摂取しても健康に影響が生じない水準をもって、基準値が設定されています。
トリハロメタンは水を沸騰させ続ければ最終的には取り除くことができます。心配であれば10分程度煮沸した水を使うといいでしょう。
日本の基準は厳しめなので、問題はないのではないかと思います。
おしまい
ミネラルウォーターと一口に言っても、様々な種類があることがわかりました。
ボトルの水は非常時にも重宝しますので、家に常備しておくのもいいと思います。