皮膚の健康に関わるビタミンについて調べてみました。
ビタミンAについて
ビタミンAの働き
ビタミンAは、上皮細胞の生成に関わる脂溶性(油に溶けやすい)のビタミンです。
上皮細胞とは、皮膚や粘膜、目などの体が外に触れている部分にある細胞で、体に入ろうとする有害なものを一番最初に防御する役割を持っています。
特にビタミンAは目の健康に大きく関わるビタミンです。ビタミンAが不足すると、まず夜盲症(いわゆるとり目)となり、対処しないと失明に至ります。
ビタミンAには2種類ある
ちなみに、ビタミンAにはビタミンA1とビタミンA2がありますが、ビタミンA2はあまり食事で摂取することがないため、ビタミンA1のことをビタミンAと言っている場合が多いようです。
レチノールとはビタミンA1の化学名ですので、レチノール = ビタミンA として差し支えないと言えます。(レチナールやレチノイン酸など、レチノイドと総称される他の形でもビタミンAは存在しますが専門的になるので省略します)
ベータカロテンは吸収されにくいが毒性も出にくい
ベータカロテン(βカロテン、ベータカロチンとも)はレチノールの分子を2つ含む物質です。ベータカロテンは効率よくビタミンAに変換されるので、食品から摂取するビタミンAといえばベータカロテンのことを指す場合が多いです。
厳密にはまだビタミンではないため、ビタミンになる前(プロ)の物質ということで、プロビタミンと呼ばれることもあります。
しかし、ベータカロテンを食事から摂取しようとした場合、サプリメントの6分の1しか吸収できないことがあるとされています。
通常の食事として摂取する野菜に由来するベータカロテンの吸収率は、ベータカロテンのサプリメントを摂取した場合の7分の1といわれています。ベータカロテンの吸収率の高い食品や低い食品のことを考えると、日本人の食事由来のベータカロテンの吸収率は6分の1となります。
ビタミン・ミネラルの本 (Tsuchiya Healthy Books―名医の診察室)
それではサプリで摂るのがいいのかと言えば、ビタミンAには過剰症(摂取し過ぎによる体調不良)があるので一概には言えません。
ビタミンAになる前のベータカロテンは体内に蓄積されないため、過剰と判断された余分なものは排泄されます。したがって、ベータカロテンでビタミンAを補充するようにすれば、過剰症が起きる心配はなくなります。
「過剰症」の恐れから、ビタミンA(レチノール)の摂取は成人では1日3000μg以内とされていますが、ベータカロテンは1日30mg以上を摂取しても手のひらや足のうらが黄色くなる症状以外の毒性は認められません。そのため、ベータカロテンはレチノールに比べて、はるかに安全な「ビタミンAの前駆体」といえます。
ビタミン・ミネラルの本 (Tsuchiya Healthy Books―名医の診察室)
つまり、3000μg(3mg)の10倍のベータカロテンを摂取したとしても大丈夫ということです。
ビタミンAの換算
0.001mgのレチノール = 0.012mgのβカロテン = 0.024mgのαカロテン
ビタミンAの1日の摂取基準は成人で0.6mg程度です。
ビタミンCについて
ビタミンCは抗酸化作用を持ち、活性酸素の除去や免疫力強化、ミネラルの吸収促進、コラーゲンの生成などの働きをするビタミンです。
化学名はアスコルビン酸です。
ビタミンCが不足すると、体の様々な部分から出血が起きる壊血病となります。
航海時代にはビタミンCの不足で壊血病が大流行したため、壊血病(scorbutic: スコルブティック)を防ぐ(anti: アンチ)ということからその名前が付きました。
(当時は柑橘類を食べると壊血病が防げることが発見され、その理由がビタミンCであるとわかったのはその後しばらく経ってからです)
壊血病の症状は、ビタミンCの不足によってコラーゲンの生成が滞り、細胞の結合が弱くなることと関係しています。
逆に、ビタミンCをしっかり摂取すると細胞の接着が強化されるため、外部から異物の侵入を防いだり、肌のハリとツヤが出るなどの効果が現れます。
加えてビタミンCにはメラニン色素と呼ばれるシミやソバカスの原因色素の生成を抑える効果があるため、美容に深く関わるビタミンと言えます。
ビタミンAとは違い、ビタミンCは水溶性のビタミンで、大量に摂取しても余分な分は尿として排出されます。そのため、過剰摂取の心配はありません。
ビタミンCの1日あたりの摂取基準は成人では100mgです。
これらのビタミンが肌に良い理由
紫外線を浴びると、皮膚に一重項酸素とよばれる活性酸素が生まれます。これは有害なものなのですが、ベータカロテンはこれをなくすように働いてくれます。
20代前半の女性を対象とした紫外線の実験報告では、ビタミンAの前駆体であるベータカロテンの有効性が明らかです。その実験では、女性たちが紫外線を浴びたあとは、皮膚や血中のベータカロテン濃度が著しく低下しました。
これは皮膚に発生した一重項酸素などの消去にベータカロテンが働いた結果であると考えられます。
ビタミン・ミネラルの本 (Tsuchiya Healthy Books―名医の診察室)
また、紫外線を長時間浴びると、皮膚細胞の遺伝子が損傷を受けます。これが起きない様に現れるのがメラニンですが、メラニン色素は沈着するため、シミの原因となっていまいます。
しかし、ベータカロテンやビタミンCなどが十分にあれば、メラニンを生成しなくても皮膚を紫外線から守ることができます。
メラニンは紫外線を吸収し、その刺激で発生した活性酸素の消去に働いて皮膚細胞を守っています。そのメラニンが生成していなくても、サプリメントによる抗酸化ビタミンが十分に補充されていれば、活性酸素による皮膚の炎症などから身を守ることができるわけです。ビタミンCもメラニン色素の沈着を防ぐことで、紫外線の障害から皮膚を守る効果が期待されます。
ビタミン・ミネラルの本 (Tsuchiya Healthy Books―名医の診察室)
ちなみにメラニンは、髪の色を決める色素でもあります。
毛髪には、ケラチンの他にも、美容に関連深い物質があります。それが毛髪色を決めているメラニンです。紫外線に長時間照射されると肌が黒くなりますが、その時に皮膚で形成されている物質と同じものです。毛髪中のメラニンの割合は3%程度といわれています。この3%のメラニンによって、毛髪の色が決まります。
ビタミンはシミを予防するが治すわけではない
教えて!gooに以下の様な質問が投稿されていました。
ビタミンC内服錠剤でシミに効果があった方いらっしゃいますか? – スキンケア 解決済 | 教えて!goo
しかし、勘違いしてはいけないのは、ビタミンはシミになる原因を予防する効果はあっても、すでにシミになってしまった部分を治す効果はないということです。
日を浴びたりする前に十分ビタミンを補充しておかなければなりません。
喫煙者にベータカロテンは向かない
タバコを吸う方は、ベーテカロテンの摂取を控えたほうがいいそうです。
ビタミンC、ビタミンEと並んで抗酸化作用があるのがベータカロチンですが、喫煙者には向かない栄養素です。ベータカロチンを喫煙者が摂取すると肺がんを誘発することがわかったので、摂りすぎには注意しましょう。
ビタミンAとビタミンCは壊れやすい
ビタミン類の熱に対する安定性は E > D > B2 > B1 > A > C の順で、さらにビタミンA、 C、 Eは二重結合をもつので酸化されやすい性質を持っています。
おしまい
ビタミンは13種類ありますが、それぞれが重要な働きを持っています。
野菜ジュースやサプリメントなどで定期的に補充しておく必要がありそうです。
3 件のトラックバック