あるサプリメントに含まれていたL-システインという成分が気になったので詳しく調べてみました。
L-システインとは
L-システインは肌や爪、髪などに含まれるアミノ酸です。システインのL体なのでL-システインと呼びます(詳しくは後述します)。
人体内では肝臓で作られます。食事でしか補充できない必須アミノ酸ではありません。しかし、体内で作る量だけでは不足しやすく、食事によってL-システイン自体、またはL-システインを作る元になる成分を摂取することが重要になります。
このためL-システインは準必須アミノ酸(Semi-essential Amino Acid)と呼ばれることがあります。
L-システインの「L」とは エナンチオマーについて
L-システインの効果について書く前に、頭についている「L」が何を表すのかを軽く説明します。
化学物質には、下の図のように、同じ構造を取っているけれど重ねることができない、鏡写しのような形をとるものがあります。
この性質をキラリティーと言い、この性質を持つ物質をエナンチオマー(光学異性体)と呼びます。エナンチオマーにはL体とD体の2つがあります。
これがなぜ重要なのかというと、これによって物質が人体にどう影響するかが変化するためです。
例えば、システインに関しては、L-システインしか人体にとって有益ではありません。人間はD-システインを代謝する(有効に使う)ことができないそうです。
humans can only metabolise left or L enantiomers, such as L-Cysteine. R-Cysteine is not taken up or commonly metabolised, therefore commonly used racemic mixtures of the two forms are only half comprised of useful amino acids.
(日本語訳)
人間はL-システインのような、左(L)のエナンチオマーのみを代謝できる。R-システインは吸収されず、通常代謝されない。したがって、通常は2つエナンチオマーのうちの1つの有益なアミノ酸しか使われない。
Nutrition and Hair Health – The Trichological Society
従ってサプリメントとして使われるシステインも、L-システインのみとなっています。
L-システインの効果
エスエス製薬の公式HPには、L-システインについて以下の効果があると記載されています。
- エネルギー不足による疲れ・だるさを改善
- メラニンの生成を抑制
- 黒色メラニンを無色化
- 過剰なメラニンを排出
- 毛穴のつまり・にきび・吹き出物に効果
髪を健康にする
また、ビタミンB6と働くことで、髪を守り毛包細胞を健康にするという研究結果があります。
The study found that l-cysteine and vitamin B6 protected the hair and improved the health of hair follicles.
Healthy diet and vitamin supplements found to reverse greying hair or hair loss – The Raw Food World News
有害物質の除去
体に有害な成分の排出にも効果があるようです。
You can scavenge hydrogen peroxide directly with lipoic acid and cysteine.
…
You can lower homocysteine with B-6, B-12, and folic acid.
Top 24 Ways To Delay Graying Hair – Selfhacked
[日本語訳] 過酸化水素をリン酸とシステインで排出させることができる。 ... システインと葉酸、ビタミンB6とB12でホモシステインを減少させることができる。
ホモシステインは代謝時の副産物で、動脈硬化などの原因となる物質です。
Cystine and cysteine both helped reduce blood levels of fats in laboratory rats with a type of cancer that affects fat metabolism. However, cystine had a different role than cysteine: It boosted levels of an enzyme that removes fats from the bloodstream, according to a report in Cytotechnology in June 2010.
The Difference Between Cysteine & Cystine | LIVESTRONG.COM
[日本語訳] シスチンとシステインはどちらも肥満系のガンを持つ研究室のラットの血圧や脂肪を下げた。 しかし、シスチンはシステインとは違い、2010年6月に国際細胞検査士のレポートによれば、それは血液中の脂肪を取り除く酵素を増やす働きをした。
二日酔いの防止
L-システインがアセトアルデヒドの濃度を抑えて二日酔いを防ぐ効果があることが東北大学大学の研究により明らかになりました。
東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野の飯島克則(いいじま かつのり)講師、前嶋隆平(まえじま りゅうへい)医師、下瀬川徹(しもせがわ とおる)教授らのグループは、アルコール摂取後の胃液中のアセトアルデヒドの増加が、非必須アミノ酸であるL-システイン投与によって抑えられることを明らかにしました。
本研究は、お酒に弱いALDH2不活性型の人でもL-システイン投与により胃液中のアセトアルデヒド濃度を抑制できることを初めて示した重要な報告です。
胃癌のリスクを減らすサプリメントL-システインの効果 | プレスリリース | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-
白髪の原因になるという証拠はない
「システイン 白髪」で検索すると、システインは白髪を増やすかのように書かれたサイトがいくつかあります。
しかし、どのサイトにも根拠となっている文献が存在せず怪しいと言わざるをえません。
実際、海外の文献ではそのようなことは一切書かれていません。逆に、システインの元となるメチオニンには白髪の発生を抑える効果が示唆されています。
…under in vitro condition, methionine oxidation can be prevented by l-methionine, it would be interesting whether l-methionine could be useful for intervention or reversal of the hair graying process.
Oxidative Stress in Ageing of Hair
[日本語訳] ...実験環境下では、メチオニンの酸化はL-メチオニンで防がれることがわかり、これは白髪ができる過程を阻止・逆行に効果があるかどうか興味深い点である。
システインに関しましてはアメリカでは20年以上もスキンケアや肝臓の体質改善で人気のあるサプリですが、アメリカ食品医薬品局からは白髪になるので注意が必要であるとの注意喚起は出ていません。
アメリカは人口の半分の一億四千万人が何かしらのサプリを摂っているため、国がサプリをキチンと監視している国ですので、上記の注意喚起がなければ、まず大丈夫でしょう。
システインを飲むと白髪が増える?|アメリカンビタミンショップ
L-シスチンとの違い
L-システインと似たアミノ酸にL-シスチンがあります。これは、以下のようなL-システインが2つ結合した物質です。
L-シスチンとは、L-システインが2分子結合したアミノ酸で、髪や爪に含まれるケラチンというたんぱく質を構成しています。L-シスチンは、体内でL-システインに分解され、いろいろな成分と合成することにより、それぞれの効果を発揮してくれるのです。
L-シスチンは、アミノ酸の一種メチオニンからも合成され効果を発揮しますが、メチオニンは体内で合成されない必須アミノ酸なので、食事や補助食品などから摂取しなければならない成分です。
L―シスチンとL-システインの違いとは? | 美白スキンケア講座
2つのシステインからシスチンが作られますが、逆にシスチンを分解してシステインにすることもできるようです。
少し前にも書きましたが、システインはメチオニンというアミノ酸から作られます。
An amino acid called methionine is used to make cysteine, but it takes several steps to get from methionine to cysteine, and you need vitamins B-12 and B-6 to make it happen.
…
Cystine is made when two molecules of cysteine combine. If your body needs more cysteine, it can reverse the process and convert cystine back into cysteine.
[日本語訳] メチオニンと呼ばれるアミノ酸はシステインを作るのに使われるが、複数の過程を経る必要がある。そしてその反応にはビタミンB12とB6が必要になる。 ... シスチンは2つのシステイン分子から作られる。身体が多くのシステインを必要とした時、シスチンからシステインに戻すことができる。
シスチンやメチオニンはアミノ酸の一種なので、肉や魚などに多く含まれています。
おしまい
調べてみた結果、特に副作用もないようなので安心して補充できます。
野菜にはほぼ含まれていないようなので、動物性タンパク質やサプリから摂取する必要がありそうです。