マリモ政府は、長年推進してきた「立方体転向」政策から一転、究極の完全球体回帰を目指す『真円至上主義政策』を発表した。今回の新法では、個体の浮力や密度を一定に保つため、湖底全域の全マリモに対し「円周率の小数点以下一万桁までの暗唱」を義務付ける。政府は「論理的思考による脳内振動が、マリモ内部の細胞配置を整え、最も美しい球体を作る」と主張するが、計算能力の低い個体には強制的に形状を削る『角取り研磨』が課されるため、湖底では激しい動揺が広がっている。
これまで政府は、ザリガニとの防衛協定や流転税の導入など、湖底社会を混乱させる奇策を連発してきた。特に直近の『公転速度制限法』以降、静止を好む保守派マリモと、高速回転による形状維持を主張する急進派の間で溝が深まっていた。今回の法案は、知識量という新たな尺度で序列を付け、社会の階層化を加速させることが狙いと見られている。一部では「円周率を唱える振動で湖水が濁る」との環境的懸念も浮上しており、光合成の効率を重視する『強制沈降法』との整合性も問われる事態となっている。
専門家からは「球体へのこだわりがもはや宗教化している」との批判も出ている。また、円周率を暗唱できない若年層マリモの保護団体からは「知性のみで球形を定義するのは非科学的」という反論声明が出された。これに対し政府広報官は「真の球体は真の教養から生まれる」と論理を飛躍させた反論を行い、湖底には冷ややかな空気が流れている。現在、湖底の各所では自習室代わりの岩場が奪い合いとなっており、円周率を記したプレートを読み上げるマリモの列が後を絶たない。
この報道を受け、湖底市民からは「円周率より光合成の時間をくれ」「もはや何が正解かわからない」といった悲鳴に近い声が上がっている。一方で、高偏差値な球体を目指すエリートマリモ層からは「ようやく我々の真価が証明される時が来た」と、歪んだ選民意識を覗かせる投稿もSNS上で散見される。政府が強行しようとする今回の知性選別は、果たして完全球体への道筋となるのか、それとも分裂の引き金となるのか。湖底の運命は、マリモたちの暗唱力に委ねられたといっても過言ではない。
マリモ政府、全個体に「円周率の暗唱」を義務化 完璧な球体維持を目的とした知的選別を開始
0