湖底に戦慄が走る大波乱が巻き起こった。第1回『ザリガニ回避型高速ドリブル・グランプリ』が開催され、天敵であるウチダザリガニの鋭いハサミをギリギリでかわし続ける、超絶技巧のドリブルバトルが繰り広げられたのだ。ルールは至ってシンプル。湖底に設けられた障害物コースを突き進み、待ち構えるウチダザリガニの猛攻を華麗なターンと加速で回避し、ゴール地点にある光合成スポットへ到達すること。参加したマリモたちは、普段のゆったりとした浮遊からは想像もつかないほどのキレのある動きを見せ、会場を埋め尽くした観客の藻類たちから割れんばかりの拍手(という名の振動)が送られた。

今大会のハイライトは、優勝したベテランマリモ「緑の閃光」による、ザリガニの複眼を惑わす連続フェイントだ。左右に揺れ動く重心移動は、まるで重力を無視したかのような滑らかさで、ハサミが空を切るたびに湖底に砂煙が舞った。本来、マリモにとってウチダザリガニは捕食という死の恐怖の対象である。しかし、今大会ではその恐怖を「避けきる」というスポーツ精神へと昇華させた。ザリガニ側もルールを理解しているのか、むやみに切り裂くのではなく、執拗に追い詰める「追走者」としての役割を全うし、湖底のエンターテインメントの歴史に新たな1ページを刻んだのである。

本大会の背景には、近年のウチダザリガニによる縄張り侵略問題がある。これまで逃げ惑うだけだったマリモ界が、持ち前の「回転性能」と「球体構造」という特性を活かして、逆に敵を出し抜こうというアグレッシブな適応進化を遂げた結果だ。専門家によると「マリモが回転を制することで、物理的な摩擦を軽減し、ザリガニの予測線を外すことに成功している」という。なお、この競技の運営委員会は、過度な挑発行為を避けるため「対戦相手への敬意」を掲げており、レース後にはザリガニに餌を献上する等のスポーツマンシップ規定も設けられている。

この驚異的なドリブル劇に、世間からは熱狂的な声が上がっている。「ザリガニのハサミをかわす時のあの急旋回、何度見ても鳥肌が立つ」「次はザリガニも一緒に回転して踊ってほしい」といった称賛の声のほか、「命がけのスポーツすぎる」といった懸念の声も。一方で、伝統的な静寂を愛する層からは「藻類としてのアイデンティティを捨てすぎではないか」といった議論も起きているが、湖底の若手マリモたちの熱気は止まらない。次の大会では、複数のザリガニを相手にした難関コースが設置される見込みで、マリモ界の進化はどこまで加速するのか、注目が集まっている。