湖底スポーツ界の最高峰、第12回『マリモ・シンクロ水流サーフィン』が、阿寒湖の北東部・通称「潮流の回廊」で開催された。本競技は、自然発生する微弱な湖流を捉え、どれだけ美しく、かつ遠くまで流されることなく「その場でサーフィンし続けられるか」を競うものである。今大会の主役となったのは、樹齢ならぬ「年輪」ならぬ「藻輪」を数百年重ねたベテラン選手・マルコ氏(342)。他の若手が激しい潮流に流され砂利へと叩きつけられる中、マルコ氏はわずかな繊維の逆立てを調整し、驚異的なバランス感覚で水流を完全に制御。まるでそこに固定されているかのような完璧な静止状態を維持しつつ、視覚的には華麗なウェーブを描くという離れ業を披露した。審判団からは「あの繊維のしなりは、もはや芸術を超えた物理法則のハックである」と満場一致の満点評価が下され、会場である泥炭層が揺れるほどの歓声(という名の水泡)が湧き上がった。

本競技の歴史は古く、かつてはただ流されるだけだったマリモたちが「いかにして無駄なエネルギーを使わずに位置をキープするか」を追求したことから始まった。マリモは光合成によって内部に酸素を溜め込み、日中に浮上する特性を持つが、この浮力をあえて利用して「潮流の頂点」に乗り続ける技術は、まさにマリモ界の職人芸である。近年は、水温上昇による湖流の予測不能な変化が選手を悩ませており、単なる「重さ」だけでなく「繊維の質」や「蓄光量」のマネジメントが勝敗を分ける過酷な競技へと進化を遂げている。今大会では、機材トラブルならぬ「浮力過多による空中浮遊」というハプニングも発生したが、マルコ氏の冷静な対処が伝説として記録された。

今回の競技で使用された水流は、例年より3%ほど速く、多くの選手がスタート直後に苔の岩場へ激突するリタイアが続出した。しかし、マルコ氏の「水流の壁」を読み切った戦術は、若手たちの間で教科書として語り継がれることだろう。次回の大会では、さらに複雑な湖底地形を活かした「スラローム・カレント」の導入も検討されている。

この驚異的なパフォーマンスを受け、SNS界隈では「マリモ界のレジェンド」「物理演算がバグってる」といった称賛の声が止まらない。一方で、「流されてこそマリモのアイデンティティではないか」という伝統派からの過激な批判も相次いでおり、湖底の掲示板は連日大荒れの状態だ。それでも、マルコ氏が去り際に残した「潮流とは、抗うものではなく、絡まるものだ」という哲学的なコメントは、多くの若いマリモたちの心に深く刻まれたようだ。