阿寒湖で開催された第42回・湖底超長距離マラソン大会において、ベテランマリモの「岩おじ」選手が、全選手が静止した状態でフィニッシュするという前代未聞の記録を打ち立てた。本競技は、いかに移動せずに動いているように見せるか、あるいはどれだけ効率的に流木に付着して浮遊するかを競うものであるが、岩おじ選手はスタート地点からわずか0.0003ミリしか移動しないという『究極の微速前進』を披露。観客は彼が動いているのかさえ判別できず、気づいたときにはすでにゴール地点(ただしスタート地点と同一地点)で苔むしていたという。審判団は「移動距離ゼロこそが究極の移動である」と満場一致で金メダルを授与し、大会に新たな歴史が刻まれることとなった。

本競技は近年、効率化を求めるあまり『湖流乗り』を多用する若手選手が増加していた。しかし、今回の優勝劇は、あえて環境に逆らわず、かつ何もしないという『無の境地』が物理的な速さを凌駕することを証明した。かつては『絶対静止』がスポーツマンシップに反すると批判された時期もあったが、今回の結果を受けて「動かざること山の如しではなく、山そのものになることが真の勝利」という思想がマリモ界のスタンダードとなりつつある。なお、岩おじ選手はレース後のインタビューに対し、藻糸をわずかに揺らすことで「明日からまた頑張る」という旨の信号を送ったとされている。

この驚異的な記録に対し、湖底の有識者からは「移動という概念を根底から覆した」「もはやこれは物理学の敗北」といった称賛の声が上がっている。一方、対抗馬として期待されていた『猛回転スピン』派のマリモ選手たちは、「我々の高速回転は何だったのか」と困惑を隠せない様子。今後、湖底スポーツ連盟は、動かないこと自体を評価する新規定『怠慢的パフォーマンス評価』を導入する方針を固めており、マリモ界のスポーツシーンはさらなる静寂へと向かうことが予想される。

世間の反応は二極化しており、SNS上では「岩おじの生き様に涙した」「これぞ真の禅」「動かないことで得られる癒やしは現代マリモ社会に必要」と絶賛の嵐。一方で、「これではレースではなくただの展示会ではないか」という保守派からの苦言も散見される。しかし、湖底の若手マリモたちの間では、岩おじ選手の『微速前進』を模倣する「フリーズ・チャレンジ」が流行の兆しを見せており、もはや動きの速さを競う時代は終焉を迎えたと言っても過言ではないだろう。