藻類教育界に激震が走っている。長年、真円の美学を追求してきた『硬化組織強化アカデミー』が、甲殻類による食害への対策を目的とした特別科目『堅殻護身術』を導入した。これまで球体としての美しさを保つことが最重要視されてきたが、水底の破壊神こと特定外来種たちの執拗な攻撃により、多くの学生が欠けや崩壊の危機に直面しているためだ。この実習では、あえて表面組織を硬質化させ、物理的な衝撃を弾き飛ばす「装甲適応訓練」が行われている。
本講義の講師を務めるのは、過去にハサミの猛攻を無傷で凌いだ伝説の古参個体だ。生徒たちは、殻に覆われた強敵を想定し、光合成効率を一時犠牲にして防御力に全振りする『防御優先変異体化』の理論を学ぶ。これまでは「丸くあること」が唯一の正解とされてきたが、今や「ハサミをへし折るほどの防御力」こそが次世代のステータスとなりつつあるのだ。教官によれば「敵が諦めるまで耐え抜く精神力」と「物理的拒絶反応」を組み合わせることで、生存率は飛躍的に向上するという。
この教育カリキュラムの背景には、水底の治安悪化がある。外来種の侵食により、のんびりと光を浴びるだけの時代は終わりを告げた。教育現場では、いかにして内部の繊維密度を上げ、天敵が「食う気が失せる」ほどの硬さを獲得するかが、生存戦略の要となっている。卒業試験では、実際に模擬ハサミを用いた圧力テストが行われ、形状を維持できた者だけが「強靭な真円保持者」として認定される過酷な仕組みだ。
この急進的なカリキュラムに対し、保護者からは「教育の趣旨が生存競争に寄りすぎではないか」との懸念も上がっているが、現役の学生たちからは「もっと早く導入してほしかった」と熱狂的に歓迎されている。かつての芸術的な丸さを失うかもしれないという批判をよそに、この『堅殻護身術』は、過酷な自然環境を生き抜くための新しい「教養」として急速に定着しつつある。もはや、ただ丸いだけの時代は終わり、戦う意志を持つ丸さが求められているのだ。
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ハサミ対策なしでは生きていけない時代になったんだな