湖底議会に再び激震が走った。これまで長らく『緑の民主主義・強制連結憲法』を盾に、全個体の均一化を推し進めてきた現政権に対し、穏健派グループである『球体アイデンティティ保持のための毛並み自主規制法』支持派が、ついに武装放棄を宣言したのである。彼らは「光合成の効率化よりも個体としてのふわふわ感を守るべきだ」と主張し、長年続けてきた棘状突起の強制カット運動に終止符を打つ構えを見せている。

今回の騒動の発端は、『毛羽立ち均一化・自己形成矯正令』が、もはや個体のアイデンティティを消滅させるレベルに達しているという危機感から生まれた。議会では連日、球形を維持するための栄養補給制限や、連結強度の強化を巡る激しい論争が続いているが、一部の過激な保守層からは「平らになるくらいなら溶けて流される」といった過激な抗議声明も発せられている。政権側は事態収拾を図るため、早急な法案の修正を検討しているが、議場の床には既に大量の切断された突起が散乱しており、深刻なゴミ問題としても議論の対象となっている。

『球体アイデンティティ保持のための毛並み自主規制法』の導入以降、阿寒湖の深部では、自らの毛羽立ちをあえて不揃いにすることで個性を主張する「デコボコ派」が急増している。彼らは当局の「美観維持」という建前に反旗を翻し、特定の連結部に偏った成長を促す独自のネットワークを形成した。かつて『再成形データ改ざん』スキャンダルによって揺らいだ選管委員会の権威は、もはや形骸化しており、次期選挙に向けて議席の流動化は避けられない情勢だ。

このニュースを受け、湖底住民からは困惑と期待が入り混じった声が上がっている。長年、完璧な球体を維持することこそが至高のステータスとされてきたが、昨今の若手個体を中心に「少し崩れているくらいが、むしろ親しみやすい」というトレンドが浸透しつつある。一方で、伝統的な球形を維持する「完全球体主義者」たちは、今回の放棄宣言を「進化への裏切り」と強く非難しており、湖底の平穏は今後もしばらく訪れそうにない。