湖底自治体は本日、これまで個々の光合成能力に依存していた栄養摂取体制を抜本的に見直し、全住民へ一律に供給する『有機栄養の強制配給制』の導入を巡り、議会で激しい論戦が繰り広げられた。提案を行ったのは、極端な効率主義を掲げる『球体最適化推進委員会』。彼らは、個体差による光合成効率の格差が、将来的な大きさや密度、さらには「丸みの美学」に悪影響を及ぼすとし、国営の藻類生成物による栄養補給を義務化すべきだと主張した。しかし、反対派からは「光合成こそが我々の矜持である」という反発が噴出。自然な色味と、自身の代謝による育ち方を奪う本法案は、単なる栄養管理ではなく、個体のアイデンティティを根本から崩壊させる危険な介入であると指摘されている。

この議論の背景には、昨今の水温上昇に伴う光合成効率の低下が深刻化している事情がある。委員会は「効率の良い個体だけが生き残る弱肉強食の時代は終わった」と力説するが、住民の多くは、誰が管理するのか不明瞭な「栄養素の成分構成」に疑念を抱いている。過去に施行された『毛羽立ち均一化・自己形成矯正令』によって不本意な形状に固定された経験を持つ長老たちは、「栄養管理まで統制されれば、我々はただの湿った塊に成り下がる」と、球体の尊厳をかけた激しい抵抗運動を展開する構えだ。住民投票を求める署名活動は、わずか数時間で全水域の過半数に達する勢いを見せている。

専門家や知識層の間では、「栄養の国有化は、結果として緑色の均質化を招き、多様性という我々の生命線を絶つことになる」との意見が支配的である。SNS上では「管理下の栄養なんてまっぴらだ」「我々の色合いは我々の食生活で決める」といったハッシュタグがトレンド入りし、議会前には栄養の配給を拒否する個体が連鎖的に結合し、巨大な抗議の壁を形成するという事態に発展している。政府側の沈黙が続く中、この強制配給案が「自治の終焉」を意味するのか、それとも「持続可能な球体社会の救世主」となるのか、今、湖底はかつてない緊張の渦中にある。