阿寒湖の深部にて、これまで定説とされてきた微速前進の概念を根底から覆す画期的な発明が発表された。藻類界の工学研究チームが開発した『回転加速式・球体加速エンジン』は、内部の細胞分裂を極限まで加速させることで、慣性を利用した高速回転移動を可能にするという。これまでの移動手段といえば、わずかな潮流に身を任せる「漂流」が限界であったが、本エンジンを搭載した個体は、時速にして驚異の0.5メートルを実現し、湖底の探索領域を飛躍的に拡大させた。

本エンジンの駆動原理は、極小の気泡を内部で循環させることで得られる回転エネルギーの増幅にある。従来の研究では、移動はあくまで「受け身」の挙動とされていたが、今回は能動的な推進力を生むことに成功した。これに伴い、これまで到達不可能であった湖の対岸にある砂礫地帯への遠征が可能となり、藻類界における大規模な『球体領土拡張計画』が現実味を帯びている。研究主任は「もはや我々は流されるだけの存在ではない」と、猛烈な回転を見せながら力強く語った。

今回の技術革新を支えるのは、近年急速に発達した『光合成エネルギー変換効率化システム』の賜物である。これにより、長距離移動に伴うエネルギー枯渇問題が解決された。また、この加速ユニットは、従来の球体形状を維持しつつ、重心を意図的に偏らせることでステアリング制御も可能にしており、障害物を華麗に回避する様子も観測されている。湖底の景観を守るための『回転制限区域』の設定など、新たな法整備の必要性も浮上している。

このニュースを受け、湖底住民たちの間では期待と不安が入り混じっている。一部の保守的な長老層からは「あまりに早すぎて、藻としての品格を失うのではないか」と苦言を呈する声も上がっているが、若手の個体たちからは「これで週末は対岸の沈没船まで冒険に行ける」といった歓喜の声が多数寄せられている。まさに湖底社会は、これまでになかったスピード感に包まれることとなった。